対G大阪戦(05−30A)。

リーグ戦でありながら,カップ戦のように「ファイナル・スコア」が非常に大きな意味を持つゲーム。


 そんな意味合いを持つゲームであれば,主導権を握る時間帯があろうと,それほどに大きな意味を持つものではない。


 ゲーム序盤にリズムを掌握していたのだから,その段階で確実にフィニッシュに持ち込んでおきたかった。浦和がゲームのリズムを完全に掌握できるかどうか,は「早い段階での先制点奪取」が大きな鍵を握っていると思う。それゆえ,良いリズムでゲームに入っている時点で畳み込めないと,その後の展開が難しくなっていく。
 丁寧な守備応対を繰り返す相手守備ブロックを決定的な破綻に追い込むことができず,中途半端なポジションでボールを奪取される。その時点で再びボールを奪い返すべくファースト・ディフェンスに入るのか,あるいは一旦自陣に引いた上で守備陣形を整え,数的優位を確実に構築した上でボール奪取に入るのか。そんな部分が不明確になっていたことに加え,相手ボール・ホルダーの動きだけではなく,ボール・ホルダーをサポートする相手の動きをどう組織としてケアしていくのか,という部分をも問われたように思う。
 今季,相手ボール・ホルダーを比較的自由にニュートラル・エリアからアタッキング・サード,深いケースではペナルティ・エリア付近にまで侵入させてしまっているケースがある。組織的なディフェンスからマンマーク・ディフェンスにどの時点で切り換えるのか,という部分での戦術イメージが微妙にズレを見せている。そんな印象を受けることがあったが,今節においてもディフェンス面での「意識の微妙なズレ」があったように思う。


 また,後半に入って猛攻を仕掛けたものの,その攻撃が「波状攻撃」という形にまでなることは少なかったように思う。左右両サイド,中央(前線)が中盤と分断しているかのような形で攻撃ユニットとして機能してしまっている,というような印象が強かった。アウトサイド,あるいは前線を起点とする攻撃を中盤が効果的に支え,タイミングに応じてレジスタディフェンダーが前線に積極的に飛び出すように促すで相手守備ブロックのマークを引き剥がす,という形にはあまりならなかったように感じる。攻撃の起点となる選手に対して,集中を途切れさせることなくタイトなマークを繰り返している相手守備ブロックに対して,ただアタックを繰り返すのではなく,必要に応じて後方の選手を積極的に押し出しながら,縦にディフェンス・ラインを揺さぶる必要があったはず。そんな動きが,今節の“3ボランチ”システムでは見えなかったように思う。


 ピッチ上の選手たちから直接対決にかける“スピリット”を感じることは充分にできたものの,彼らの能力を最大限に引き出し得るシステムだったのかどうか。
 G大阪,というチームを殊更に意識することで,本来持っているはずのリズムやストロング・ポイントを減殺してしまってはいなかったか。そんなことを感じたゲームだったように思う。


 いつも通り,ではあるのですが,今回は意図的に1日置いて書いています。


 で,1日置いて考えている間にふと思い出したのが,全国高校ラグビーのゲームでした。
 ポテンシャルのあるチームなのに,なぜか自分たちが得意とするゲーム運びが出てこない。自分たちが本来持っているリズム感を取り戻すためにかなりの時間がかかり,結局は相手としていた強豪校に屈してしまう。


 当然,競技の性質が違いますし,ゲームへの入り方だけを見れば,間違いなく今節の浦和の方が良かったとは思います。
 ただ,2つのゲームそのものから共通して受けた印象として,「相手に対する意識」が必要以上に大きくはなかったか,ということがあるように思うのです。今節で言えば,見慣れないパッケージが明確に示すものでもあると思います。あくまでも相手を追い立てる立場なのだから,「特別な対策」を意識するのではなく,ある程度のリスクは引き受けながらも自分たちのストロング・ポイントを真正面から相手にぶつけるべきではなかったか,と。
 「時間」がアドバンテージになるのではないか,という見方があったけれど,むしろ「・・・対策」を意識するあまりに本来の強みをどう生かすか,という肝心な部分が結果的に疎かになり,チーム戦術という部分では「迷いを生じた」と見ることもできる。今節においては,時間的なものがネガティブに作用した,ということも言えるのではないかな,と正直感じます。


 後半,追加失点のリスクを背負いながら徹底的に中盤を省略したパワープレーに踏み切ったその判断は最大限尊重したいと思うけれど,それ以前にできることはなかったか,と思う部分も正直あるのです。


 いずれにせよ,現時点においては大きく後退してしまったとは言える。
 しかし,ここで沈むわけにはいかない。相手がどうあれ,自分たちのストロング・ポイントを徹底的に押し出して眼前のゲームを戦うべく準備を重ねる。その繰り返しの中で,ひとつでもポジションを押し上げていくチャンスをうかがえばいい。そう思うのです。