ウェンブリー、FAカップに間に合うか。

ウェンブリー・スタジアム”というと,ツイン・タワーをイメージされる方も多いのではないでしょうか。


 トラック(の名残,というのが妥当でしょうか。)がピッチ外周を取り巻くようになっていて,スタンドはコロッセオのような配置になっています。ハイブリーなどのように,ピッチの四隅にそれぞれスタンドを配置する「シューボックス型」ではないところが特徴だったように記憶しています。


 そして,「特別なゲーム」を印象付ける競技場でもあったな,と。


 たとえば,カップ戦決勝を思い浮かべてみます。普段はジャージを着用してダッグアウトに構えているマネジャーであっても,ウェンブリーのピッチに立つときにはスーツを着こなし,フラワーホールにはコサージュをあしらっています。選手たちのユニフォームにも,特別なゲームを記念する刺繍が施され,歴史を重ねてきた競技場とその印象が重なり,TVで見ていた私にも「特別な場所」という印象は強く刷り込まれていました。ただ,“コカ・コーラ”のロゴが妙に目立っていたスコアボードの部分を見ても「老朽化」という部分は覆い隠しようもなく,現在は新競技場が建設途上にあります。



 ・・・いやあ,この低く垂れ込めた雲。実にイングランドですね。だけど,雲の流れるスピードは速いんですよね。


 そういう話ではなく。この写真はESPNサッカーネット(英語)さんからお借りしてきたのですが,立ち上がっているクレーンの数だけを見てもかなり明確に「工事中」であります。最近のイングランドの建築を特徴付けるグラス・ストラクチュアとトラス構造が目につきます。そして,新しいウェンブリーを象徴するのが,トラスで形作られているアーチ。なかなかインパクトのある新しいランドマークであります。


 しかしながら。


 竣工が「時間の問題」という印象よりもむしろ,どれだけ時間がかかるのだろうか,という感じの方が強いように思います。その印象を裏付けるかのような記事がサッカーネットにアップされておりました。いつものように斜め読みしてみますと,建設費用が当初予算をオーバーしていたり工期がずれ込んでいるために,当初予定している2006年3月という引き渡し時期までに完工するかどうかが不透明,というものです。


 何をもって「完工」とするかにもよりますが,競技場,フットボールの聖地であるウェンブリーにとって最も重要な要素であるはずの「ピッチ」のことを考えると,充分な養生期間が必要なはずです。テスト・イベントを開催できるかどうかも含め,3月でもかなりギリギリのタイム・スケジュールではないか,と思うのです。そのために,FAのチーフ・エグゼクティブであるブライアン・バーウィック氏はウェンブリー・スタジアムでのFAカップ決勝開催に関して希望を持っているものの,カーディフにあるミレニアム・スタジアムでの開催の可能性をも否定はしていない,という微妙なスタンスを見せています。


 個人的なことを言えば,新装なったウェンブリーでFAカップファイナルを見たい,という部分も当然あります。歴史,格式を考えても,正式な“オープニング・ゲーム”にはFAカップが相応しいと思うし,このスケジュールに合わせて問題解決に全力を尽くすべき,とは思うのです。


 一方では。


 どう見ても,工期は相当ずれ込んでいるような感じがあるし,建物本体の工事が完了したとしてもピッチ・コンディションのことも考えるとあまり無理なことも言えないように思うのです。となれば,(次善策だろうとは思うけれど)2006〜07シーズン開幕を告げる“コミュニティ・シールド”をこけら落としとする,という判断もあって良いのかな,とも思います。