歴史を感じさせる、というトレンド(野球場の話)。

甲子園改修:伝統の重みと郷愁 アイデンティティー大切に(MSN-Mainichi)という記事を読んで,最初に頭に浮かんだフレーズを,そのまま今回のエントリのタイトルにしてみました。


 というわけで,今回は野球場の話などを。


 MLBではすでに,「クラシックな外観」「開放型球場」という要素が球場建設に際してのトレンドである,と言えそうです。


 個人的にはMLBのベスト・ボールパークではないか,と思っているサンディエゴ・パドレスの本拠地,ペトコ・パーク(MLB−サンディエゴ・オフィシャル)は間違いなく,このトレンドに沿った設計がなされています。そして,私が最も羨ましいと思うのは,天然芝のフィールドを持ったボールパークが圧倒的に多い,ということです。可動式ルーフを備えるセーフコ・フィールドシアトル・マリナーズの本拠地)やチェイス・フィールド(アリゾナダイヤモンドバックスのホーム・フィールド)は開放状態を基本として,天然芝の敷き詰められたフィールドを備えています。


 そんなアメリカのトレンドを,しっかりと阪神甲子園改修に関わるひとたちは現地視察で直接肌に感じてくれたのでしょう。現在の甲子園のアイコンと言える,ツタや銀傘を残す方向とか。良いことだと思います。


 老朽化に伴って,建物を改修(改築)しなければならない時期というのは間違いなく訪れます。特に日本では「耐震性」確保,という要請から古い建物を上手に残せない部分が確かにあるように思います。それでも,「歴史」を感じさせる要素を巧みに織り込むことで,連続性を感じさせることは間違いなくできるはずです。今回リンクを張らせてもらった記事中,佐山さんのコメントとして,

 「野球は他のスポーツにはない歴史がある。甲子園の古さも売り物の一つ。補修しながらも、原型は残していけばいい」

 「歴代の甲子園出場校のプレートを目立つ位置に設置するなど、歴史を後世に伝え、リピーターを増やす努力をして欲しい」


というものが取り上げられていますが,私もまったくの同感です。


 阪神甲子園には,「高校野球の聖地」としての役割もあるし,その歴史は何物にも代え難く,他の球場が望んだところで追い付けるものではありません。甲子園にしかない魅力ですから,もっとアピールしてもいいと思うのです。阪神甲子園を改修するにあたり,基本的な方向性として「歴史を感じさせる」という判断に至ったこと,うれしく思います。


 あとは,他の球場が中途半端に「多目的性」を追い掛けるのではなく,アメリカの球場のように「できるところから」総天然芝化してくれることを望みたいですね。千葉マリンとか神宮球場,あるいは横浜スタジアムが天然芝のフィールドに生まれ変わると,それだけで野球場に足を運ぶひとが増えてくるのではないか,とちょっと思ったりします。