天皇杯と「飢餓感」。

はっきり言って不愉快ですね。


 イングランドで言えば,“カーリングカップ”に相当するクローズド・トーナメント(リーグカップ)を取り上げて,FAカップ同様にオープン・トーナメントである天皇杯よりも価値あるトーナメントに映る,というご意見は。

 いきなり書きはじめてしまいました。


 今回は,ジェレミーさんのコラム(FC JAPAN)をもとにして,ちょっとした提案をしてみようと思うのです。


 ジェレミーさんは,ヤマザキナビスコカップの方が天皇杯よりも重要であるかのように感じているようです。確かに,2002シーズンからのヤマザキナビスコカップ決勝にはカップ戦決勝独特の張り詰めた,しかしフットボール・フリークにとっては何とも心地良い空気が流れているように感じます。
 ただ,その空気の源泉はナビスコカップが持っている「権威」や「歴史の重さ」などではなく,決勝に進出してくるクラブが持っている「タイトルへの飢餓感」だろうと思うのです。
 浦和,FC東京,ガンバ大阪に千葉。「タイトルへの飢餓感」を持ち続けてきたクラブが,決勝へ進んできている。そして,彼らが国立霞ヶ丘での決勝に進出してきたことと,決勝戦の観客動員数が上昇気流に乗ったこととは無関係ではないはずです。


 一方,天皇杯ナビスコカップがどうやっても追い付けない「歴史の重み」を持っているし,それゆえの「権威」を感じさせもする。にもかかわらず,プロのフットボール・クラブならば当然のように持っている「タイトルへの飢餓感」を上手に引き出せていないように思うのです。恐らく(好意的に理解するならば),ジェレミーさんの持っている不満の原因はこの点にあると思います。


 端的に書いてしまえば,,どれだけディビジョン1のクラブを本気にさせるスケジュールにするか,ということでしょう。


 ジェレミーさんの母国であるイングランドでは,プレミアシップを戦うクラブがFAカップ初戦を戦うにあたって,絶妙なタイミングを心得ていることを書いてくれなければフェアではない。ある種の原稿作法かも知れないけれど,ただ天皇杯が魅力的ではなくなってきていることを書いているだけ。この点が,ワタシには猛烈に不満であって,不愉快なのです。
 拓海さんのエッセイ(サッカークリック・アーカイブス)でも触れられているように,シーズン半ば,中だるみになりがちな時期に合わせるかのようにプレミアシップ勢がFAカップの舞台に登場し,勝ち上がってきた下部リーグのクラブや場合によってはアマチュアのクラブとの真剣勝負を繰り広げる。これを日本に当てはめれば,現行のスケジュールでは8月後半から9月ということになるわけです。間違っても,リーグ戦終盤に差し掛かる11月ではありません。
 そして,シーズン終了はほぼリーグ戦と同時であることが望ましい。となれば,天皇杯決勝を「伝統の1月1日」から移動するか,リーグ戦のスケジュールをちょっとずらす必要があるように思うのです。
 そのほかにも,準決勝までのラウンドで“ホーム・アンド・アウェイ”スタイルをとっていないことや,各ラウンドごとにカップタイ・ドローを実施することで対戦の妙を作り出す努力をしていないことなど,不満に思う部分は結構あります。


 いずれにせよ。


 「1月1日」という日程だけが,天皇杯の伝統となってしまっているようだけれど,本当に守っていかなければならない伝統とは,天皇杯が日本で最も権威のある「カップ戦」である,ということでなければなりません。
 その伝統を守るために,トップリーグに位置するフットボール・クラブが本能として持っている「タイトルを渇望する気持ち」を揺さぶることが求められる野では,と思うわけです。もちろん,すぐに取りかかれることではないでしょうけれど,JFAやJリーグ,関係するひとたちがオープンに議論してもいい話だと思うし,JFAのボスである川淵さんがジェレミーさんのコラムを読んで,何らかの(天皇杯にとってポジティブな)反応を示してくれると良いな,などと思っています。