Game, WildKnights!

Jリーグの日程とバッティングすることがなければ,川向こうのことでもありますし間違いなく足を運んでいただろう「全勝対決」。


 正直,かなり気にしておりました。ですので,リザルトを確認するや小躍りしましたね。
 こうなると,「地元開催」であることをすっかり忘れて,東日本社会人リーグで長く上位を占めてきた強豪・三洋電機トップリーグという舞台に存在感を示した,ということにうれしさを感じます。だけど,重要なのはスコアだけではないのですよね。


 ということで,今回は川向こうのラグビー・チームの話をしてみようかな,と。


 東芝府中ブレイブルーパスサントリー・サンゴリアスと並んで東日本を代表するクラブ・チームであったはずなのに,トップリーグが立ち上がってからはその輝きを失いかけているかのような印象を持っていた。


 しかし,今季は違った。


 東芝府中ブレイブルーパスと並んで,開幕以来4連勝を飾り,トライ数に基づくボーナス・ポイントによって東芝府中がリーグ・テーブルのトップに位置する,という状況での直接対決を制することができれば,首位に立つことができるという非常に重要なゲームが,地元・太田の競技場で開催される。恐らく,僅差によって勝負が決まるのではないか,と個人的には予想していたのだが,ゲーム・スタッツ(トップリーグ・オフィシャル)をチェックして,その印象は覆された。


 昨季までの両者の関係を冷静に見れば,東芝府中ブレイブルーパスの攻撃力をどう抑え込み,逆襲に転じるのかがゲームの基本的な展開になるのではないか,と考えていた。


 しかし,ゲームの主導権を前半立ち上がりの時間帯から握ったのは,ワイルドナイツだった。開始直後の4分から28分の間に3トライ3コンバージョンを奪い,21−0と東芝府中を抑え込み,ゲームの主導権を握る。対するブレイブルーパスは31分,富岡のトライとその後のコンバージョンを成功させることで7点を返すもの,38分にはワイルドナイツにPGを決められ,再び突き放される。ブレイブルーパスは前半終了を目前とした42分にPGを決め,24−10で前半を折り返す。
 ハーフタイムを挟んで,昨季トップリーグ覇者がどのようにゲームのリズムを取り戻すのか,という部分が注目されるところだったが,実際にはワイルドナイツが立ち上がりから猛攻を仕掛け,後半16分までの間に2トライ2コンバージョン,2PGを奪い,44−10と得点差をさらに広げる。
 ただ,ディフェンディング・チャンピオンも本来の攻撃力を取り戻すかのように反撃にかかり,34分までに3トライ2コンバージョン,1ペナルティゴールを叩き出し,得点差を12まで詰めることで追撃態勢を整えたかに見えた。
 しかしゲーム終盤の40分,ワイルドナイツ・吉田にゲームを決定付けるトライを奪われ,その後のコンバージョンも決められる。結果,51−32で直接対決をワイルドナイツが制する。


 ちょっと失礼か,とは思ったのですが,トップリーグ第5節の観客数を比較してみました。


 トップリーグ首位をめぐる「直接対決」ということで注目度も相当高かったのではないか,と思いますし,カードのアヤもありましょうが,太田市陸上競技場に足を運んだひとたちの数は,ラグビーのメッカである秩父宮近鉄花園に足を運んだひとたちの数よりも多かったのです。


 これ,結構意味のあることではないかな,と思うのです。


 まだ,ラグビーフットボール界はハッキリとした“ホームタウン制”を敷いてはいません。いませんが,サンスポの記事

 歓喜の拳が、低い雲で覆われた空を押し上げるように突き上げられた。勝った! 首位だ!! 三洋が地元で王者狩りだ。
 「地元の声援が後押ししてくれました」。CTB榎本主将の声が弾む。2年連続7位の伏兵が、常勝・東芝を圧倒した。試合後には客席からファンがグラウンドになだれ込んで選手を取り囲み、“おらがチーム”の勝利をたたえた。


という表現は,スポーツと地域との関係がどれだけ大事なものなのか,ということを端的に示していると思います。


 自分たちが本拠としている地域コミュニティで,本当にクラブのことを自分のことのように思ってくれるひとたちの前でプレーすること。ともすれば,競技環境だけを見ればはるかに恵まれている秩父宮近鉄花園や熊谷のような「中立地」でのゲームよりもはるかに意味があるのではないでしょうか。「完全オープン化」の前にもできることはあるはずだし,今回の太田陸上でのゲームは,そのできることを明確に示したのではないか,と思います。ラグビー関係者は太田のこの盛り上がりを真剣に考えるべきでしょう。