対大宮戦(05−28A)。

「試行錯誤を繰り返しつつも模索し続けてきたチームとしての新たな攻撃オプションが,決して間違っていないことを確認できたゲーム」。


 今節を表現するならば,このようなフレーズを使いたい。


 前節から朧気ながらに見えてきたものが,組織的な守備を展開する大宮を相手にして明確なものとなったように思う。ボランチと4枚の最終ラインで構築される相手守備ブロックは,数的優位を構築するようにしてボールホルダーに対してアプローチをかけ,ボールを奪取した後は前線へと素早くボールを送り,鋭くカウンター・アタックを仕掛けていく。そのような基本戦術を採用する相手に対して,今節における浦和は,組織を意識させる攻撃を仕掛けてきた。
 縦へのスピードに乗った中央突破だけを繰り出すのではなく,早い段階でボールを両サイドに散らし,相手守備ブロックをサイドに充分に引き出した後に中央へとボールを折り返し,そこへ走り込んだFW,あるいは中盤の選手がフィニッシュにかかる,という攻撃が意識されていたように思う。ただ,前半においては相手守備ブロックのポジショニング・バランスを積極的に崩すまでには至らなかった。


 その印象が変わるのは,1−1で折り返した後半立ち上がり。


 トレクアルティスタレジスタのポジションを入れ替えたことが,効果を上げる。そして,セットプレーから追加点を叩き出し,均衡状態を崩した後の3点目につながる攻撃は,浦和が新戦力加入以降思い描いてきた攻撃を端的に示すものであるように感じる。
 エリアに飛び込むタイプのフィニッシャーではなく,エリアに巧みに侵入し,ラストパスを冷静に決めるタイプのフィニッシャーという,ある意味今までの浦和では“ミッシング・ピース”となっていたタイプの選手の加入によって,戦術的な幅が大きく拡がり,サイドが「攻撃の起点」として強く意識できるようになってきた。そのことを示すのが,3点目につながる攻撃であったように感じる。


 中央での「縦」へのスピードだけでなく,「サイド」でのスピードも攻撃オプションとして使えるようになることで,相手守備ブロックを縦方向のみならず,横方向にも崩す形に進化しはじめている。そんなことを確認できたゲームではなかったか,と感じる。


 いつものように,1日遅れで書きはじめております。


 シロート目ですけれど,チームとしてのセッティングが再び出てきたな,という感じがします。
 言い換えれば,マリッチ選手の加入によって,今までチームが持っていなかった選択肢を手にしたように思うのです。彼がエリア付近でターゲット・マンとして機能しながら,もうひとりのFW,あるいは中盤の選手(レジスタやトレクアルティスタ)が前線へ飛び出す動きを引き出す。あるいは,サイドからのクロスに反応して,ヘディングを仕掛ける。
 「縦」へのスピードだけを背景とする攻撃から,バリエーションが拡がる可能性は加入当初からあったわけです。ただ,マリッチ選手をどう使うか,あるいはどう使われるかに関してのピクチャーがぼやけているような部分があったのではないでしょうか。
 ひょっとすれば,いままでの「縦」の意識が邪魔をしたのかも知れません。そのフォーカスが合っていないかのような印象が一気に変わったのが,前節でした。確かに緊急事態的な側面もあったでしょうが,永井選手を右サイドに起用したことで,チーム全体の意識が良い意味で大きく拡がったように思えます。
 そして,守備意識の高い大宮を相手にした今節において,チーム戦術の幅が拡がったことを「実感」することができたように思います。


 ポンテ選手をトップに位置させ,長谷部選手をトレクアルティスタの位置へ上げ,暢久選手をレジスタに置く。トレクアルティスタと2トップが逆三角形を維持しながら巧みにポジション・チェンジを繰り返しながら相手守備ブロックへ縦方向のアプローチを繰り返し,同時に両サイドが横方向へ相手守備ブロックを引き出す。永井選手が上がったときのスペースに対するケアと,相手ボール・ホルダーに対する高い位置でのファースト・ディフェンスとのバランスを考え,フィジカルに強さを持つ暢久選手をレジスタの位置へコンバートすることで,ハーフコート・カウンターを意識した速攻時には高い位置でのボール奪取から攻撃の起点として機能させ,リトリート的に攻撃を受け止める時間帯では,最終ラインと連携をしながら相手攻撃をしっかりと受け止める役割を持たせる。
 今節,ハーフタイムを境に変更された初期布陣は,チーム戦術を最大限に引き出すためのある種の最適解を示しているように思えます。