街が醸す“Matchday”の雰囲気。

中野田に欠けているのは,「周辺環境が醸し出す“Matchday”らしさ」かな,と思うときがあります。


 特に,今季は少なくなってしまった「駒場」でのMatchdayを前日に控えた,今日のようなときに。


 最近,Matchdayを前に肩に力の入ったことばかり書いていたような気がするので,今回はちょっと違うことを書いていこうと思っています。


 ひさびさにプレミアシップの情報を引き出そうとESPN Soccernetを開いていると,頭の中は情報整理に使われているのではなく,ハイブリーやホワイト・ハート・レーン,あるいはスタンフォード・ブリッジの周辺環境,その印象を思い出す方に無意識に使われていました。
 ロンドンのクラブは基本的に住宅街が近くにあり,最寄り駅から歩いてスタジアムに行くことのできる環境にあります。例えば,スタンフォード・ブリッジに行こうと思えば,ディストリクト・ライン(ウィンブルドン方面)に乗ってフルハム・ブロードウェイ駅で降りる。駅の改札を抜けたら,目の前にある通りを左方向に歩いていってほどなく左側にスタンフォード・ブリッジのスタンドが見えてきます。ガンナーズならば,ヒースロー・エクスプレスができるまでロンドン中心部へのアシであったピカデリー・ラインに乗ってその名もアーセナル駅,あるいはヴィクトリア・ラインも乗り入れているフィンズブリー・パーク駅まで行ってスタジアム方向へちょっと住宅街を歩く,というのがパターンだと思います。


 さて,地元に住んでいるひとたちは,たとえシーズンチケット・ホルダーではなくとも,あるいはボランティア・スタッフであるスチュワードでなくとも,クラブとの生活を日常のものとしているように感じます。時には,ゲームを前にエールを必要以上に摂取してしまったためか,グラスの破片だろうと思われるガラス片が路上に散らばっていることもあるし,グラスを路上に置きっぱなしにしてしまうこともあるけれど,それを見咎めるでもなく見守っている。そんな,日常と非日常が複雑に絡み合っているかのような姿を見て,周辺環境もMatchdayを作り出す重要な舞台装置なのだな,と実感しました。


 駒場へ向かう道すがら,ときどきフィンズブリー・パークからハイブリーに向かうときの印象がダブることがあります。浦和の街がフットボールという競技と深く関わり続けてきたその歴史が,駒場へ向かう道を何となく「特別なもの」として見せているのかな,と思うのです。


 いつか,中野田にある埼玉スタジアム2002へ向かう道も,駒場浦和駅から向かう道のようにMatchdayを彩る舞台装置のように感じるときが来るのかも知れません。
 現在進行中の都市計画が具体的な形を見せ,ひとたちがあの地域に集うようになり,生活するようになれば,スタジアムをもっと身近なものとして感じてくれる,あるいはクラブとの日常を楽しんでくれるひとたちが増えるのかな,と。そして,浦和美園駅から歩いていくひとは,どんな印象を持ちながら遠くに見えるスタジアムを見るのかな,と想像しながら,2005〜06シーズンをもってその歴史を閉じるハイブリーとは違い,まだ駒場は自分たちの近くにあり,歴史を積み重ねていけることにちょっとしたしあわせを感じています。