対横浜戦(05−25)。

勝ち点を奪取する,という最低限のタスクは達成した。


 また,ここ数節において不安定さを見せていたディフェンス面が安定感を取り戻したことは,充分に収穫だと言っていい。また,ゲームの時間帯に応じてショート・カウンターを効果的に繰り出せるようになってきたことは,ある種の瞬発力を問われるリーグ終盤にあっては,間違いなくポジティブな材料になると思う。


 ただ,リーグ中盤から模索しはじめているのではないか,と感じる「ビルドアップからの遅攻」にバランスを欠くところがまだあるように思う。


 プレッシングに対するイメージが変化したからか,中盤がどのような形でファースト・ディフェンスに入るのか,具体的に言えばボール奪取までを念頭に置いた激しいプレッシャーをボール・ホルダーに対して掛けていくのか,あるいは最終ラインとの守備的な連携をイメージしたプレッシャーを掛けるのか,が不明確であるように感じる。
 また,リトリートを念頭に置こうとも,ハーフコート・カウンターをイメージしようとも,全体をコンパクトに構成し,ショートレンジ〜ミドルレンジ・パスを交換しやすい距離感を保っていなければならないと感じているのだが,サイドを突くロングレンジ・パスなどを意識しすぎるためか,チーム全体が引き延ばされてしまう時間帯が今節にあってもあったように思う。相手にゲームの主導権を握られかけた時間帯では,チームのポジショニング・バランスが微妙に崩れていたように思う。


 加えて,安定したディフェンス・ブロックを持っているチームを相手にする場合には,「縦方向」へのスピードだけを意識した攻撃ではなく,揺さぶりを背景に守備ブロックを引き出す攻撃をどう繰り出すか,が課題ではないか,と感じている。そして,昨季のサントリー・チャンピオンシップで明確なものとなったこの課題を,今節においても否応なく再確認させられたように思う。
 固い相手守備ブロックを縦方向に揺さぶるための前線への飛び出し(ポジションチェンジ)や横方向へ引き出すためのサイドチェンジが組織的なディフェンスの代償としてか,思ったよりも少なかったように感じる。


 決定力を支えるための,戦術的なワンクッションの必要性。


 スコアレス・ドローによる「勝ち点1」は,リーグ終盤にあって優勝争いに優位な立場を作り上げるためにも不十分な結果と言わざるを得ないが,今節にあっても提示された課題を解決することは,浦和が戦術的に「脱皮」するためにも必要不可欠なものとなるはず。サイドの選手をどう攻撃面で生かし,レジスタがどうサイド,前線やトップ下の選手によって生かされるか。この部分が明確になることで,目指す戦術的な進化はその焦点が合うものと思う。


 まいどの通り,1日遅れで書きはじめているわけですが。


 今回ばかりはちょっとばかり,いつもと事情が違います。
 正直なことを言ってしまえば,「浦和目線」の自分と,単なる「フットボール・フリーク」の自分が奇妙に隣り合わせているような感じを持ったゲームだったな,と感じ,その整理にちょっと手間取ってしまったのです。


 浦和目線で見れば,スタンスはある意味明確です。


 もちろん,「勝ち点3」を奪い取るべきゲームだったし,今季において両者のパワー・バランスは変わったのだ,ということを相手に知らしめるべき絶好機だったと思っていただけに,スコアレス・ドローという結果ははっきり言って失望の対象だと感じています。
 また,リーグ・テーブル上位に対してさらなるプレッシャーをかけるためには,今節における「勝ち点3」は非常に大きな意味があったわけだから,勝利という結果を求めたかったのは確かなことです。その意味で,不満が残るゲームだったとは言えます。


 ただ,「フットボール・フリーク」としての目線が出てくると,ことはちょっと複雑で。


 ゴール,という瞬間を味わえなかったけれど,ある意味でのベスト・ゲームだったのではないか,と思うからです。相手は明らかに,「浦和」を相手にすることで本来持っているパフォーマンスを取り戻し,浦和にぶつけてきた。浦和も,相手のパフォーマンスを真正面から受け止めた。互いのプライド,モチベーションが真正面からぶつかり合うことで,結果的にストロング・ポイントを消し合うような展開にはなったかも知れないけれど,緊張感が90分間プラスピッチにあった,と感じます。決してスコアレス,というだけで過小評価するべきゲームでもないように感じていたのです。


 時にリーグ・テーブルのポジションだけが興味対象になってしまい,ゲーム内容を二の次にしてしまうことがあるのですが,今節に関しては両方が同じように興味対象になってしまった。「横浜」という相手を,どこかで特別視しているからかも知れません。