基礎工事。

ラグビートップリーグ(TL)は,どういう方向を目指しているのか。


 少なくとも,2007年本大会において決勝トーナメント進出を目論むジャパンの「基礎構造」であることは間違いない。ジャパンという上屋構造物が堅固であるためには,基礎構造であるTLがより活性化することが重要項目となるだろう。


 そういう観点から見れば,今回TLカンファレンスで発表されたことは確かにまだまだ不完全な部分はあるけれど,リーグ戦という基礎構造をしっかりとしたものとするための「第1期基礎工事」としては評価すべきだろう,と思っています。


 というわけで,今回はサンスポの記事をもとに,ラグビートップリーグについて書いていくことにします。


 まず分かりやすさが増すな,と思うのは“マイクロソフトカップ”の廃止です。


 そもそもTL覇者とマイクロソフトカップ覇者との関係がよく分からないし,開催時期もTLの権威を落としかねないタイミングであるように思っていたからです。
 もちろん,カップ戦もあって良いと思います。
 しかし,リーグ参加クラブに限定された“クローズド・トーナメント”をリーグと別に開催するメリットを感じないことも確かです。日本選手権の規模をある程度拡大すれば,十分にゲーム数は確保できるはずだし,地域リーグ,大学リーグなどとの関係を考えれば,完全にプロフェッショナルに移行しているわけではないTLの現状を見てもリーグ・カップのようなトーナメントは時期尚早,と感じられるのです。


 そして,この点がクリアになった。このことは評価していいと思います。


 次に評価すべきは,参加チーム数の拡大だと個人的に思っています。


 TLは現行12チーム・1回戦総当たり制のリーグ戦として運営されていますが,来季,ということは2006〜07シーズンから14チームへと拡大されるのだそうです。このことは,最初に書いたように「第1期基礎工事」としてはいいな,と思うのです。


なぜ「第1期」としては,という留保文言を書いているのか。


 ラグビーフットボールにもJリーグのような「ホームタウン」の意識が芽生えて欲しい,と心から願っているからだし,ラグビーのクラブに「戻るべき場所」が生まれることで,“ホーム・アンド・アウェイ(2回戦総当たり制)”の本格的なリーグ戦が根付いて欲しい,と思っているからなのです。
 ただ,決してワタシは企業ベースのクラブを否定するものではないです。また,ラグビー界の考えるスピードでオープン化に踏み切ることにも一定の理解は持っているつもりです。
 しかし,地域を強烈に意識しながら活動しているクラブはまだ多くはないし,地元開催のゲームも決して多くはない。一方で,ラグビー・ネイションのようにラグビー界が「完全オープン化(プロフェッショナル化)」されるのは恐らくは時間の問題だろうし,押しとどめることのできないところまで来ているとも感じています。
 そのときに,クラブが拠って立つところはやはり「ホームタウン」だろうと思うのです。秩父宮,あるいは近鉄花園に必要以上にゲームが集中している現状は,あまりラグビーの普及にとってポジティブな効果は生まないように思えます。


 加えて言えば,本当にラグビーを普及したいと思うのならば,積極的に本拠地を置く地域社会に働き掛け,ラグビー・スクールなどを地域の小学校,中学校などで展開すべきだろうと思っています。Jリーグ参加クラブが急速に下部組織を拡大し,普及活動に注力していることを「他人事」として片付けて良いはずがない。お手本は,すぐそばにあるのです。
 以前,ワイルドナイツの取り組みについて書いたのは,ラグビーだって可能性を秘めているし,フットボールとはまた違う面白さを持ったラグビーをもっとアピールして欲しい。そして,ワイルドナイツは実業団という枠組みを超えてJリーグの本当に参考にすべき部分に気付いてくれている,と思ったからです。
 トップレベルのスキルを持った選手たちに指導してもらったこどもたちが,将来的にワイルドナイツの選手になるか,もちろん未知数だけど,少なくとも自分の街にあるクラブを意識しながら生活してくれるはずです。地元でゲームがあれば間違いなく気にしてくれるはずだし,スタジアムに実際に足を運んでくれるかも知れない。


 そんなひとたちをもっと増やしていかないと,ラグビー人気は衰退するだけだとも思っています。


 解決しなければならない問題は山積しているし,日本選手権の日程も考えれば,安易に2回戦総当たり制のリーグ戦を導入できない事情もあるか,とは思う。
 それでも,ラグビー界が「地域」を意識したリーグを設計しなければならない時期は間違いなく迫ってきていると思うし,視点を変えれば本当にジャパンをラグビー・ワールドカップの舞台で活躍させたいと思うのならば,基礎構造であるべきトップリーグはしっかりしたものでなければならない。(プロフェッショナルか,あるいは企業ベースかという問題はともかくとして)ホームタウン,という意識を参加各クラブに徹底させたうえでの2回戦総当たり制を現実的な視野に収めるべき時期は近いように思います。