等倍の評価。

かなり時期を逸してしまった話題,ではあるのですけれど。


 とは言っても,結構普遍的な内容であるようにも感じるし,ちょっと書いておこうと思います。


 「人気」というものも,プロフェッショナルにとっては重要な要素だろう,とは思います。当然,個人に対する注目が出発点ですが,その個人がやっている競技へも目が向いていくことで,間接的であるにせよ,競技のプロモーションが期待できる,とも言えるからです。
 しかし同時に,その人気は実力に支えられていなければならない,とも思うところです。にもかかわらず,時にスポーツ・メディアはそのアスリートの実像を掘り下げることなく,大きく持ち上げたり落としたりを繰り返すように思えます。


 そして,各民放TVが積極的に用いる,注目アスリートに対しての「キャッチフレーズ」戦略もその一翼を担っているような気がしてならないのです。
 そんなことを改めて思うきっかけとなったのが,菅山かおる選手に関する松谷誠治郎さんのコラム(gooスポーツ - NumberWeb)でした。


 NHK−BSではVリーグを中継していることは知っていたけれど,それほど真剣に見ているわけではなかったので,菅山選手がどれだけの能力を持った選手だったのか,ワタシは深く知る立場にはありませんでした。そのため,2005ワールドグランプリでの活躍によって,菅山という能力あふれたアタッカーがいることを知ったわけですが。それでも,「かおる姫」という表現にはどことなく違和感を持ってしまったのです。彼女のルックスに惹かれたことももちろん否定はしないけれど,気迫のこもったプレー・スタイルに目を奪われたからです。


 実力の世界にいる人間に対して,実力以外の要素を評価しているかのようなキャッチフレーズに対する違和感だったのかも知れないし,基礎構造であるべきVリーグでどれだけの活躍をしてきたプレイヤーなのか,という前提条件が抜けていることへの違和感かも知れません。


 もちろん,松谷さんが指摘するように,彼女がルックスでも大きなポテンシャルを秘めていたことは確かだと思います。だからこそ,ワールドグランプリでメディアに大きく注目されたのだろうし,その後のメディアの取り上げ方もすごかったのでしょう。けれど,アスリートとしての「等倍の評価」はプレーが基礎にあるべきだろう,と思うのです。


 彼女に限らず,どんな競技をしている選手であっても,無理に「スター」を作り出さなければ競技をプロモートできない,と考えているメディアのあり方は,どこかおかしいように思えます。
 特に今回取り上げたバレーボールで言えば,代表チームのゲームを盛り上げることで瞬間風速的な人気を得ることよりも,もっと大事なことがあるはずです。菅山選手のように,高いポテンシャルを秘めた選手がVリーグにはいる。そのことを,積極的にプロモートしてあげて欲しい,と思いますし,リーグ・サイドからメディアに対して働きかけられることはある,と思うわけです。


 今季は,もうちょっとしっかりとVリーグを見てみよう。そう思ってくれるひとが増える(で,少なくともワタシはそう思いつつあります。)方が大事だろうな,と思うのです。