対イラン戦。

まずは,しっかりと最終予選を首位で通過したこと。


 何よりもまず,このことについて触れておくべきだろうと思う。


 6連戦というハードな日程をこなしていた国内組を中心としているために,必ずしもコンディションが良好ではなく,またタイトルに対するモチベーションの置き方に難しさを感じた東アジア選手権とは異なり,“グループを首位で通過する”ということはチームに明確な目標を与えていたと思う。
 また,首位通過は「アジアカップ」覇者として,また,Jリーグのレベルの高さをプロモートするためにも当然達成しなければならないタスクであるとも考えられる。それだけに,単なる順位決定戦とは異なる意味があるように個人的には感じていた。それだけに,ファイナル・スコア以上に「勝ち点3」を積み上げてイランとの順位関係を逆転したことをまず最大限に評価したい。


 ファイナル・スコアは2−1。


 前半のゲーム内容を見る限りにおいては,このスコア以上の得点を挙げられる可能性を十分に感じ取ることができた。立ち上がりから最終ラインが高めの位置を保ち,全体がコンパクトさを維持しながら早い段階でのボール奪取を意図し,攻撃陣にはTVコメンタリー(当然,BSを見てました。)の木村和司氏が指摘するように,アウトサイドと前線との連動性がしっかりと看取できた。先制点に関しても,左サイドからのクロスに反応する形でシュートを放ち,そのリフレクション・ボールを前線に詰めてきたサイド・アタッカーがしっかりと流し込む,という理想的な形から生まれたものであり,後半にも当然この流れが引き継がれるものと思っていた。
 しかし実際には,前半終了直前にゴールポストを直撃する鋭いシュートを受けるなど,ワンチャンスでゲームをひっくり返されるかも知れない,という部分も感じながらHTを迎えた。


 後半に関しては,前半見せていた良好なプライマリー・バランスが微妙に狂いを生じてきたように感じた。


 前半と比較して,相対的に低めの位置で最終ラインが構えてきたために,全体をコンパクトに保つことが難しくなり,後半に入って積極的に攻勢をかけてきたイランの後手に回る展開が多くなっていたように感じる。ファースト・ディフェンスに入る位置が不明確になってきてしまったこととともに,最終ラインの位置が下がり気味になってしまったことで,ゲームの主導権をイランサイドに握られそうになった時間帯が後半立ち上がりからしばらく続いたように思う。それでも,守備ブロックは決定的な破綻を見せることなく,チームとしてはしっかりとカウンター・アタックを狙い続け,そのなかからCKを獲得,セットプレーから追加点を奪取する。
 79分にはPKから1点を返されるものの,結果2−1で最終節を勝利で終わる。


 ワールドカップ関連だと,BSという選択肢があること,ホッとしますな。


 木村和司さんも後輩の井原さんがとなりだったからか,調子良さそうだったし。
 とまあ,コメンタリーに関しても落ち着いて見ていられたわけですが,ゲームに関する印象も概ねそんな感じだったかな,と。ただ,後半の立ち上がりから微妙に下がり気味になった最終ラインの位置はやっぱり気になったですね。本大会に向けての修正点になりそうな感じがします。


 さて,これで「最終予選」を終わり,「本大会」を明確に射程に捉えたチーム作りがはじまるわけですな。もちろん,“ファミリー”を強烈に意識するようなチーム構築をする指揮官のこと,大きく枠組みを変えてはこないだろうけれど,東アジア選手権を見るまでもなくポテンシャルを秘めた選手はまだまだいる。


 誰が本大会への切符を手にするのか。


 最終予選終了が300日強のサバイバル・レースの開幕を告げた,という見方もひょっとすればできるかも知れません。