対韓国戦(東アジア選手権)。

選手権を通じて,高いレベルでのパフォーマンスを発揮したとは言い難い。


 しかし最終戦において,国内組主体のチーム構成における一定のバランス点を見出したのではないか,と感じる。


 セットプレーとは言え,後方からディフェンス・ラインを破るかのように飛び出しながらの中澤のシュートは,本来日本代表が「流れ」の中で作り出さなければならない攻撃オプションではないか。守備面やコンビネーションの側面においては第2戦の中国戦以降バランスが高まってきているが,攻撃面におけるユニットの連動性には不満を感じる部分が多かったように思う。
 前半,阿部が本来のポジションを崩して積極的に最前線にまでボールを持ち込んだ場面があったが,トップ下(攻撃的MF)が積極的に後方の選手,今節に関しては今野や阿部を前線に送り出す動きをして良いと思う。イニシャル・ポジションを大きく崩すことなく攻撃を組み立てているために,相手にマークすべき対象であったり,プレッシングを掛けるべき対象を容易に絞り込ませ,その結果として中途半端な形で攻撃を止められてしまう状況が多かったのではないか,と感じている。


 それでも。


 初戦,第2戦においては奪取できなかった「勝ち点3」をしっかりと奪い取ったことは間違いなく評価して良いと思う。「カップ戦」においては,「内容」以上に「結果」を出すことが求められる。クオリティの高いフットボールを展開できずとも,眼前の相手に対して100%のファイトを90分間プラス仕掛け続け,得点機を多く演出することができずともその数少ないチャンスをしっかりとものにし,その得点を守り切る集中力を維持する。昨季の欧州カップ戦や天皇杯を見るまでもなく,カップ戦とはそういうものだろう。その意味で前後半を通じて,ホーム・アドヴァンテージを存分に利用してきた韓国の攻撃に冷静に対処し続けながらチャンスをうかがってきたチームを評価したい。


 とは言いながら,であります。


 「冷静にならなければならないのは,コメンタリー陣」だろう!と思っております。「勝たねばならない」,というのは確かにそう思うけれど,最少得点差だろうと最終的に必要になるのは「勝ち点3」という結果だけ。国際大会というのは,徹底してリアリスティックなものなわけですし。にもかかわらず,何点欲しいんだ,オマエらは!と思うのですよ。実際,困ってしまうほどに必要以上に「うるせェ」わけで。


 ま,コメンタリーがうるセェのはいつものことですから,そんなことはさておき。


 負傷退場した坪井選手の状態が気がかりであります。
 田中達也選手に続いて坪井選手までもが戦線離脱を余儀なくされるとなると,東アジア選手権において,我らがクラブは多大なる犠牲を払ってしまったことになります。
 そして,犠牲に見合うだけの収穫を得たのでしょうか。
 チーム内に「健全な競争状態」を作り出すことに成功したことは,少なくとも収穫と言って良い。また,北朝鮮との初戦を落としたことによるチームのシャッフルによって,コンビネーションや距離感に良い方向性を感じたことも確か。
 しかし,積極的なポジション・チェンジを駆使しながら“ユニット”として相手守備ブロックに破綻を作り出そうという明確な意図がなかなか見えてこない。「個」による突破も確かに重要だが,ユニットを使った組織的な突破も同時に重要ではないか。


 東アジア選手権においても,積み残しのままの課題がある。そう感じます。