キーンの言葉。

まるで関係ないところから話をはじめますが。


 思いますに,「知性」というのにも2通りあるような。
 ひとつは,基本書などから手に入れることのできる「理論的な知性」。もうひとつは,自らの経験が必然的に導き出す「経験的な知性」。同じ「知性」であるならば,優先順位がつくものでもない。どちらにも非常に大きな意味があるはずです。


 というわけで,今回は『ワールドサッカーマガジン(2005年8月18日号』に掲載されている,マンチェスター・ユナイテッドで主将としてプレーするアイリッシュであるロイ・キーンへのインタビューから引き出された言葉を取り上げてみようというわけです。


 彼の言葉も間違いなく,「経験的な知性」が導き出したものではないか,と思っています。


 さて,このインタビューにおいてトム・ティレルさん(インタビュアー)はキーン主将に対してここ数年ユナイテッドがチャンピオン・カップから遠ざかっている原因について,チームにハングリーさがないのが原因なのではないか?という疑問をぶつけています。


 この疑問(と言うか,示唆というか)に対して,キーンはこんな答え方をしています。

 「絶頂期にあった数年前を振り返ると、選手間でのポジション争いは激しかった。そこには、優れた選手が生まれる土壌が自然と出来上がっていたのだと思う。・・・すべての選手が、このクラブでの自分の居場所をめぐって戦わなければいけないんだ。ロッカールームで笑い合うのもいいが、本質だけは忘れてはいけない」


 クラブチームであろうと,代表チームであろうと,「競争」が機能しなければチームのダイナミズムが奪われていく。ポテンシャルの高い若手選手を発掘し続けることも重要だけれど,その「原石」はしっかりとした研磨環境になければ,輝きを放つまでには至らない。
 ひょっとすればキーン選手自身,心のどこかで自分のポジションを脅かす選手の出現を待っているのかも知れない(=とは言え,キーン選手はポジションを譲り渡す気などなく,高いパフォーマンスを発揮するべく努力を重ねるだろうことは言うまでもないことですが。),とワタシは感じました。