接近戦を支える信頼感。

今回はひさびさに,屋号に忠実な話からはじめてみることにします。


 私が個人的に思うイメージとしては,“アドバン・カラー”でしょうか。


 グループAやJGTCなどの“ハコ”レースにおいて活躍されたレーシング・ドライヴァにして,現役引退後もヒジョーにエネルギッシュなお方,土屋圭市さんが現役当時に(活字メディアだったか,TVだったかは覚えていないのですが)インタビューに答えて,こんなようなことを言っていた記憶があります。

 「本当に巧いドライバーは、コーナーで接近戦を挑んでいるときでも相手を弾き飛ばしたりなどしない。もちろん軽い接触はあるけれど、相手のマシンを意図して弾くような荒っぽいドライビングはしない。そういう信頼感があるからこそ、徹底した接近戦を挑める」

 といったような感じだったと思うのですが。


 そして,土屋選手は続けて

 「巧いドライバーとのバトルは心底楽しい。だから、ともすればバトルが「心理戦」のようになってしまって、接触すればリタイアに追い込まれかねない部分のあるフォーミュラ・マシンではなく、バトルの楽しめる“ハコ”のレースに魅力を感じ、こだわっているんだ」

というようなことを答えていたように記憶しています。


 プロフェッショナルとして「寸止め」をしながら激しくファイトできること。そういう技術が見る者を魅了するのだ,ということは,恐らく土屋選手が経験から学んだ「プロフェッショナルとしての矜持」かも知れません。何か,強く印象に残っている言葉です。


 そんなことを思いながら,磐田とレアルのゲームを横目で見ていたりしたわけです。


 今日のゲームはお互いに“フレンドリー”の一線を上手に越えないようにしながら,しっかりとした「接近戦」を挑んでいる。また,勝負にこだわっていないがために,しっかりと互いのストロング・ポイントをぶつけ合うことに成功している。ある意味,土屋選手が言っていたことをフットボールの世界で再現しているような感じがしました。真剣勝負,という部分から言えば,まったくもって,という話に当然なりますが,プロフェッショナルが持つエンターテインメント性,という部分からすれば,必ずしも否定されるべきものでもないような感じが,個人的にはします。


 とは言ったけれど,そうとばかりも言えないプレイヤーもいたような(確かに,磐田のディフェンス・ブロックが鋭い飛び出しに対してレスポンスが遅れてしまい,それがあのような判定の遠因と言えば言えるけど。)。


 まあ,ともかく。


 全体を眺めて言うならば,こういう形で“インターナショナル・フレンドリー”ができるのであれば,双方のクラブにとって大きな収穫が得られるかな,と思います。