悪童、監督業へ。

恐らく,イングランドのひとにとっては(良い悪いは別にして)間違いなく印象に残るフットボーラーだと思っています。


 それまでのイングランド選手のイメージはフィジカル面の強さだけが強調される,“キック・アンド・ラッシュ”に直結する才能だけに注目される部分があったように感じますが,彼のスタイルは当時としてはかなりモダンな感じがしました。今にして思えば,現代的な10番の側面と古典的なパサーとしての側面を合わせ持った選手だったように思われます。イタリアで開催された1990年ワールドカップ,あるいはトットナム・ホットスパー在籍時に迎えた早過ぎたキャリアのピークは,間違いなく「アルコール」が導いたものでしょう。ラツィオ在籍時にはケガに悩まされてはいたものの,レンジャースでは再び才能に溢れたプレーを見せ付けてくれる。とは言え,アルコールの影響が影を落とすようになり,プレーも精彩を欠くようになっていく。1998年フランス大会では代表落ちを経験し,ピッチ上で脚光を浴びる,と言うよりはむしろ,タブロイド紙のフラッシュを浴びる時間が増えていたように感じます。


 ポール・ガスコイン


 彼のキャリアを振り返って思うのは,彼のキャリアを知るひとならば誰でも思うことだとは感じますが,アルコール依存さえなければ・・・,ということです。破天荒なところに人間味を感じ,あるいは憎めない「悪童」ではあるのだけど。正直なところスパーズや90年ワールドカップで見せ付けたポテンシャルを考えると,キャリアのピークが圧倒的に足りない選手ですよね。「勿体ない」の一語に尽きるように思います。


 でも,指導者としてその「勿体なかった」キャリアを少しでも取り戻してくれるでしょうか。


 日刊スポーツの記事を見て,ひょっとすれば彼は成功してくれるかも知れない,と期待をかけたい気分です。