プロフェッショナルとしての判断。

不意を突かれるようなニュースリリースから1日が経過し,メディアの記事が出揃ってきたように感じます。


 中にはスポニチの記事のようにセンセーショナルな見出しを打つものもありますが,J1:浦和のエメルソン,カタールのアルサドに移籍(MSN−Mainichi)というように冷静に移籍の経緯を追ったメディアの記事も見受けられます。ただ,通常の移籍劇であれば,クラブサイドからのアナウンスメントはリリースされないために,ともすれば「センセーショナルな」見出しに全体の印象が引きずられることが多いように思うのです。


 しかし,アルパイ選手の時と同様にクラブとしての姿勢を明確に示すエメルソンの移籍について,森孝慈GMの談話(オフィシャル)というニュースリリースがアップされています。サポータ,ファンに対してもできる範囲でアカウンタビリティを果たしてくれている。このことにまず,感謝したいと思っています。


 さて,森GMの談話をどう受け止めるか。


 当然,ひとそれぞれに受け止め方は異なるだろうとは思いますが。


 クラブ間交渉やエメルソン選手との話し合いの詳細にわたる言及はできないし,移籍金額など明らかにはできない部分があるだろうけれど,ただ言えることとして。「急転直下」の話とは言え,今回の移籍劇に関わった浦和,アル・サド,そして選手本人がプロフェッショナルとして(たとえベストとは評価できないとしても)ベターな選択をしたのではないか,と感じています。


 個人的なことを言えば。


 強い印象を残すフットボーラーに対して惜別の情を示したいのに,それができないような形で移籍が成立してしまった,というのが「複雑な思い」の中心にあり,濃い霧のようなものがかかっている(だからと言って無理に振り払おうなどとは思ってはいません。自然に薄くなっていくのだろうから。)ように感じています。


 でも,このような思いとは別に,フットボール・クラブにとって「新陳代謝」はチームに緊張感を常に作り出すためにも必要不可欠な要素でしょう。また,好むと好まざるとにかかわらず,移籍を含めたファースト・チームの戦力整備には,冷徹なビジネスとしての側面があることは間違いありません。選手移籍はフットボール・ビジネスには付き物であり,ある種の「日常」でもあります。そして,冷徹なビジネスの対象は,どんなにチームに対して貢献してくれた選手に対しても例外ではありません。その表れなのかも知れません。


 視点を変えれば,クラブとして「優勝を狙う」という目標にブレがない。そして,すでに何らかの方向性が見えているからこそ,シーズン途中での移籍に踏み切ったのだ,と努めて好意的に解釈したい。そう思っています。