対大宮戦(05−15)。

いわゆる,4−4−2フラット。


 攻撃面よりも守備面に意識を傾け,フラットなラインを維持しようとする最終ラインと,ダイヤモンドでもなくスクエアでもなく,フラットに構成されている中盤とがしっかりと距離を維持しながら,守備応対を繰り返していくパッケージ,そしてそこから繰り出されるカウンター・アタックに対する処方箋をどのように作り上げるべきか,という部分が,戦術方向から考えるならば中核になると思う。


 しかし,今節においてはこの技術論以前の問題を指摘する必要があると感じる。


 自戒を込めて言えば,実際にゲームに臨む前から「どのように勝つのか」という部分を気にしていたかも知れない。今節を含め,時に「通過点」と感じてしまうゲームがあることは否定できない。それは「落とせないゲーム」という意識の裏返しではあるのだが,「どのように勝つのか」という思考そのものには,試合に臨むにあたって本来必要な,「敬意」が存在していない。


 浦和のスタイルは決して「受けて立つ」ものではなく,“ハーフコート・カウンター”(あるいはショート・カウンター)という基本的なスタイルが明確に示すように,自らが積極的に仕掛けていく攻撃であり,チーム全体が連動する組織的な守備であろう。そして,その背後には「相手がどうであれ,90分プラスを100%ファイトする」という,心理面での強さが必要だろう,と感じる。相手に対して「敬意」を払うことができなければ,浦和のスタイルをピッチ上で存分に表現するための必須要件であるはずの100%のファイトを仕掛けていくことなど不可能だろう。


 今節においても,中断期間前,最もチームとしてのリズムが悪化したためにすべてが“アフタービート”的に流れていたときのように,ボール・ホルダーとパス・レシーバーとの動きに連動性が感じられない。レシーバーの動き出しを待ってからボールが走り出す,という悪循環に陥っていたように思う。心理的な部分が,持てる能力に不必要なリミッターをかけてしまい,浦和の生命線でもある「出足の鋭さ」を自ら手放してしまった状態でゲームに入ってしまったように感じる。


 対して,大宮の出足は明らかにカップ戦の時よりも鋭さを増していたように感じられる。


 そのために,大宮の基本システムである最終ライン,中盤をフラットに配置する4−4−2を効果的に崩すことができず,むしろプレッシャーを強烈に中盤のエリアで掛けられているためにパスミスが誘発され,そこから攻撃の起点を作られることが多く前半では見られたように思う。2点目の失点は,明らかに大宮が意図した攻撃を見せられたような感じがした。
 等距離に選手を位置させ,ボール・ホルダーに対して早い時間帯で数的優位を構築しようとするのがフラットな中盤を採用する4−4−2の持つ意味ならば,オフ・ザ・ボールの動きを積極的に増やすことで「等距離」の状態を揺さぶらなければならない。にもかかわらず,パス・ワークだけで守備ブロックを崩しにかかってしまったのが前半において2失点を受けた大きな要素だったのではないか。恐らく,大宮だけに限らず4バックを採用してくるチームは今節において大宮が採用したような対策を浦和に対して講じてくるはず,と感じている。そして,パス・ワークだけではなくオフ・ザ・ボールの動きを組み合わせた形でどのように4バック,最終ラインと中盤とのバランスを崩していくか,が再び攻勢に入るためにも重要な課題だろう,と思う。


 いつものように,1日遅れであります。


 今季からMDPのFORESIGHTを担当されている小齊秀樹さんが,今節のMDPに寄稿されるにあたって付けた「常にもっと勝負を.それが常勝チームへの課題だ」というタイトルは,今節のようにメンタル面で不安定さを時に露呈するチームに向けたものではないでしょうか。そんな感じがします。