必要なのは、“TIPS”。

本日付の読売新聞朝刊(サッカー面)はなかなか読ませる特集を組んでおりました。


 込山記者によるアヤックス・アムステルダムの育成システムについての記事であります。


 その記事中,シモン・カイゼル氏(アヤックス広報担当)が込山さんとのインタビューで語った内容がすごく重い内容を持っているように感じたのでちょっと引用してみます。

 「我々は、ティップス(TIPS)を基準に選手の資質を見極める。それは練習の基本概念でもある。・・・パワーもサイズも入っていない点に注目してほしい」


 というものです。


 アヤックス・アムステルダムはT(Technic - 技術),I(Insight - 洞察力),P(Personality - 人格),そしてS(Speed - 速さ)をフットボーラーの基本的資質として求めているとのことです。そして,下部組織もトップチームが伝統的に用いているシステム(3−4−3)と同様の初期布陣を採用することで,“アヤックス”のエッセンスを自然に吸収することになる,とクラブ担当者は込山さんに説明しています。


 最初は,アヤックス・アムステルダムのシステマティックな育成システムに羨ましさを感じ,本格的にジュニア,ジュニア・ユースやユース年代に対する育成,強化を打ち出した浦和が将来的に目指す育成・強化システムを強烈に意識する(=我らが指揮官が最終的にイメージしているクラブ像ともある種の相似形を描いているのではないか,と思っていますが。)一方で,“年代別代表”のことが頭をちらついたのも確かです。


 同じ“P”でもアヤックスは人格的な部分を重視する一方で,U−23,あるいはU−20を率いた指揮官は,ともすればフィジカル面での強さやパワーといった側面を求めていたように思うのです。また,彼らが求めた“ユーティリティ”という要素は盛り込まれてはいない。アヤックスはシンプルに4つの要素を列挙したに過ぎないのですが,フットボール・ネイションに対して勝負を挑むために日本代表が用意できるであろう武器が示されているように感じたのです。体格面は一朝一夕にフットボール・ネイションの水準に引き上げることはできないけれど,敏捷性や一瞬の判断力などは間違いなく武器になり得る。コンフェデレーションズ・カップで敵将が指摘した日本の武器,それは恐らくアヤックスが示した資質に重なってくるのではないでしょうか。


 これらのことを考えると,一見当たり前のことを列挙しているに過ぎない“TIPS”という要求基準が,将来的なポテンシャルを大きく秘めている年代別代表が必要とする資質を的確に示しているのではないか,と感じるのです。