横浜FC対札幌戦(05−J2#18・短信)。

ホームチームに敬意を表して,横浜FCに関して思うところを最初に書けば。


 チームの基本戦略として「しっかりとした守備ブロックから前線へ速くロングレンジ・パスを送り,サイドからの押し上げを利用しながら得点機を作る」という,非常に「現実主義的な」戦術を採用しているように感じられたのだけれど,果たしてピッチ上の選手すべてがそのような明確なイメージを共有しているのか,という疑問がちょっと浮かびました。


 具体的に言えば。


 前線だけで攻撃を構築しているように見えて,中盤,サイドが有機的に前線をサポートする形が見えてこなかったわけです。いい形でカウンター・アタックを仕掛けることができた時間帯にあっても,後方からの有効なバックアップが遅く,前線がエリア付近でボールを保持しながらも相手ディフェンス網の守備応対を振り切ることができずに,孤立している場面が多かったように感じます。カウンター・アタックの時にチーム全体としてどういう押し上げ(前線のバックアップ)をするのか,再確認する必要があるように思うところです。


 対して札幌は,悪条件のために不十分な形であったかも知れないけれど,指揮官が目指すフットボールの形をピッチ上の選手は表現していたように感じます。守備ブロックが安定していることを当然の前提条件にしつつ,最終ラインから前線へシンプルにロングレンジ・パスを供給するだけでなく,レジスタの位置からワンタッチ,ツータッチ程度のダイレクトなパス交換を通じて前線へのパス・コースを切り開くスタイルを指向していることが十分に受け取れました。


 ディビジョン2における基本戦略(極端に言えば,“キック・アンド・ラッシュ”型のカウンター戦術)を考えれば,前線の選手にボールが収まったところに厳しくファースト・ディフェンスに入るのがボール奪取を考えてもいいように思えるところです。それゆえ,安定した最終ラインをボール奪取のポイントとすることに関しては仕方のない部分があるのかも知れませんが,札幌の基本スタイルを考えると(そして,将来的なJ1でのプレーを想定すれば),ボール奪取のポイントがもうちょっと高めであってもいい(少なくとも,そういうプレー・イメージをピッチ上の選手たちで共有しておいてもいい)ような,そんな印象も持ちました。


 ・・・なぜ,札幌に注目したのかを最後に書きますと。


 端的に言ってしまえば,“カウンター戦略”を前面に押し出していなかったから,かも知れません。ディビジョン2は1部昇格という「明確な目標」が設定されているだけに,リーグ戦でありながら戦い方はカップ戦的な部分があるように思うのです。その「カップ戦的なリーグ戦」においてその先を見据えた戦術を採用してきた。興味を持って見ていきたいスタイルを持ったクラブだと感じます。