リポビタンDチャレンジ・対アイルランド戦(第2戦)。

最近1日遅れが多くて恐縮です。結構遅筆堂なErnestでございます(ひさびさあいさつ)。


 マッチ・スタッツ(JRFUオフィシャル)を見る限りでは,前半は第1戦からの修正点を上手に消化していたような感じがします。対して,後半だけを取り出せば,その印象は大きく異なるように思われます。


 思えば,この印象差こそジャパンが発展途上であることの証明かも知れません。


 前半のようなリズムをどう後半においても持続するか.メンタル面で相手の優位に立つためにも,立ち上がりは積極的に行ってほしかった.というわけで,秩父宮で行われた“リポビタンDチャレンジ第2戦(アイルランドとのテスト・マッチ)”について書いていくことにします。


 JRFUのマッチ・スタッツは地域の攻防まではつかめないものの,得点経過は非常に詳しいものがあり,後半,ジャパンがリズムをつかめないままに後半開始直後からアイルランドの攻勢にさらされていたことが分かる。
 前半からアイルランドのペースでゲームが進んでいたが,終盤の時間帯に4点差にまでアイルランドを追い詰め,いい流れでゲームを折り返すことができたように思えた。しかし,後半開始直後の2分から17分までの間,アイルランドに4トライ(3コンバージョン)を奪われる。後半6分には廣瀬のPGによってリズムを取り戻すチャンスはあったように思うが,実際には後半開始直後から失った主導権を取り戻すには至らない。しかも,失点を喫したきっかけとなる,アイルランドの攻撃の起点となったプレーは,ラインアウト(リスタート)やモール,ラックといった密集だったことが気になる。前半終了直前にイエローカードを受け,数的不利の状況であったことに加えて,フォワードの人数をラインアウトに割かなければならず,ファースト・ディフェンスにあたるべきディフェンス・ラインが不十分な状況であった。アイルランドはこの状況を的確に突き,パス・ワークのスピードを上げてトライを奪いにかかり,しっかりと短時間で得点差を築くことに成功する。ファースト・ディフェンスに入るタイミングや当たりの厳しさなど,個人能力に依存する部分も多いけれど,それ以上にポイントをブレイクしてからのコーチングなど,組織によって相手の速攻をいかに阻止するか,が大きな課題として第2戦では見えてきたように思う。
 その点,スポナビの記事(共同通信配信分)において主将・箕内がコメントしている「ボールを動かしすぎた」という部分は,修正すべき課題にも大きく関連するように思う。相手のディフェンスをこじ開けるために積極的にボールを動かす,という部分はジャパンが指向しているスタイルを考えれば大きな条件だが,ボールを積極的に動かすにあたって,しっかりとサポートの選手の動きが伴っていなければならない。第2戦においては,その点において不足する部分があったのではないか。サポートが手薄な状態でラックやモールでの攻防に持ち込まれると,今回のような逆襲を受ける可能性が高くなる。早い段階でラック,モールからボールを引き出せた場合には,あまりターン・オーヴァを受けることなく攻撃を進めることができていたようにも思う。それだけに,攻撃の要所で相手の裏を突くパントキックが欲しかったように思う。


 まず,第1戦とは異なり,しっかりとトライに持ち込むことができたことは十分に収穫と評価できるでしょう。


 しかし,前半はある程度均衡した展開であったにもかかわらず,後半開始直後から完全にアイルランドに主導権を渡してしまったかのような展開に終始してしまったことは,十分な反省材料になると思うのです。
 第1戦では,キックを不用意に多用したことでリズムを崩した。対して,第2戦では相手ディフェンスラインを崩すために,もうちょっと積極的にパントキックを攻撃に織り交ぜたかった。フィールドを大きく使って展開することと,縦方向への鋭いキックとのバランス点が見出せれば,戦術的に熟成していくように思うのです。


 さて,最後にちょっと体制面で萩本監督,進退を協会に一任(時事通信−スポナビ)という記事を見かけましたので,このことについて書いていくことにします。ちょっと思うところありますれば,たたませていただきます。


 桜のエンブレムを戴くジャパンに対して,本当に強くあって欲しい,と思っているのか。


 ラグビー・スタイルの抜本的な変更をしてまで,日本独自のストロング・ポイントを作り出すべくチャレンジに取り掛かったばかりの時期に,結果を強く求める必要があるのか。
 むしろ,“テスト・マッチ”の原点に立ち返れば,現状ではラグビー・ネイションに何が通用し,何が通用しなかったのか検証すべき時期だろう。もちろん,指揮官交代自体に関しては“日本の持てるストロング・ポイントは何か(=単純に,ラグビー・ネイションの模倣をすることなく,ジャパンを構成する選手が持っている世界に対抗できるだけの独自の武器は何か)”ということを考え続けてくれる人間であるならば,萩本監督にこだわる理由はないとは思う。だが,結果が出せなかったことを表面的な理由にして(恐らくは相次いだ不祥事の責任を加味してのことだろうが)指揮官を交代させ,ジャパンを迷走させる気か。指揮官の進退を判断する協会サイドの人間も,同様に“プロフェッショナル”な態度を見せて欲しい。少なくとも私はそう思う。