論理的な布陣選択。

確かに,指揮官ならば4−4−2を選択したい誘惑に駆られるのかも知れません。


 “欧州基準”だから,という考えもあるかも知れないし,“攻撃的なフットボールを実現するためには4バックを採用する方が良い”という信念に基づくのかも知れません。しかし,これはあくまで「勝つための方法論」でしかないのです。


 どういう選手がいて,チームとして組み立てた場合にストロング・ポイントの重心はどのあたりに位置するか。そして,最終ライン〜中盤,あるいは中盤〜前線でのコンビネーションをスムーズに引き出すために,どのように選手を配するべきか,などの具体的な条件を考えていかないと,実際には最も機能する基本システムは選択できないことになりはしないか。ジェフ千葉の指揮官であるイビツァ・オシムさんが「単純なシステム論」をしない理由はここにある,と思っています.そして,チームのシステム選択は,この戦力把握,分析が必須条件だろう,とも感じています。


 しかしながら,時にジーコ・ジャパンはその基本的な部分を飛び越す形で4−4−2にこだわった部分があるように思うのです。


 選手間に違和感があったというニュアンスのコメントがゲーム後に出されるのは,Number誌上で都並敏史ベガルタ仙台監督がインタビューに答えているように「危機管理マニュアル」が3バックを基礎として選手に共有されていたからではないでしょうか。
 さらに言えば,“静的な戦術パッケージ”を考えてみたところで,さほど大きな意味はないように思うのです。むしろ動的なバランス,どのようなコンビネーションによって相手の攻撃を防ぎながら,攻撃へとつないでいくのか,という部分の方が圧倒的に重要であるように思うのです。


 これらのことを考えれば,ワールドカップアジア最終予選(対バーレーン戦)でのシステムは,ひとつの最適解ではないか,と思うのです.そして,コンフェデレーションズカップでは,そのバーレーン戦で採用したシステムである3−4−2−1(あるいは3−6−1)で初戦・メキシコ戦に臨む可能性が高いことをデイリースポーツの記事では報じています。デイリーの記者さんが指摘するように,日本代表最大のストロング・ポイントは中盤のタレントの豊富さであり,そのタレントを最大限に攻撃面,守備面に生かすためには中盤を厚くした布陣が適しているように思えます。
 今回のコンフェデレーションズカップでは戦術的な成熟がひとつのテーマになるはずです.その基盤が3−4−2−1システムを採用して臨む(であろう)メキシコ戦において構築できれば良い.そう期待しています。