対UAE戦(短信)。

確か,“Number”誌上でだったか「冷たい怒り」との表現を見たことがありますが。


 まさしく,そんな心境です。


 あまり,積極的に書きとめたいゲームではないですけれど,そんなことを言っている間にバーレーン戦は近付いてくるわけで,ある意味「腹を括るためのゲーム」だなと。フレンドリー・マッチでもなければ,調整やテストでもない。何か,戦力を「空費」してしまったような印象があるのです。


 冗談抜きにスリリングな展開を覚悟しておかなければならないようです。では,今回はちょっと短めで。


 典型的な中東勢の「堅守速攻」に屈した形であろうな,と。
 しかも,現在の日本代表が抱えるウィーク・ポイントを的確に突かれる形での失点によって,ゲームを決められてしまう。
 全体が前掛かりに攻撃しているときにターン・オーヴァをくらい,ボランチと最終ラインとの間にロングレンジ・パスを出される。パス出しと同時に走り込んでいる選手へのファースト・ディフェンスが遅れることで致命的なピンチを生み出してしまう。失点の場面に限らず,UAEは積極的にボランチと最終ラインのバランス(=距離感,と言っても良いのでないか)の悪さを突き続けていたように思う。言ってみれば,UAEは強烈に「縦」を意識した攻撃を仕掛け続け,ワンチャンスをものにしたと見ることもできるように思う。


 対して,日本代表の意識は「横」方向に偏ったものではなかったか,と感じる。


 サイドチェンジによってフィールドを広く使うこと自体は評価できる。だが,相手守備ブロックを効果的に揺さぶることができないのであれば,相手DFを前方に引きずり出すか,あるいはラインを押し下げるべく縦方向に揺さぶりをかけなければならないはず。しかし,そういう戦術的な意図を感じることができなかった。ショートレンジ・パスだけではなく,ロングレンジ・パスを巧みに織り込みながらコンビネーションで相手DFラインを揺さぶりたいのだが,現在の日本代表の攻撃スタイルからは,「組織性」よりも「単独勝負の集積」としての攻撃しか見えない。


 ジーコ・ジャパンにおいてはコンビネーション・プレーを重視した戦術練習はあまり行われない,と聞く。ならば,コンビネーションが「属人性」を持ったものになっているかのような印象を受けるのも無理からぬこと。「組織性」を担保するためにメンバーを固定する必要性に迫られていたのだとすれば,現在の日本代表は非常に脆弱な基盤の上にある,と言わなければならない。バーレーンとのアウェイ・マッチまでに残された時間はあまりない。受動的な考え方だが,とにかくアジアカップを制したメンバーに戻したうえでチームとしての初期バランスを取り戻す以外に採り得る修正策はないように思う。