蹴球協会杯−決勝戦。

PK戦にまでもつれ込んだのは,今回が初めてだそうであります(日刊スポーツの記事より)


 「カップ奪取」。


 しかも,歴史と権威あるタイトルを奪うという明確な目標に向かって戦うゲームであれば,ゲーム内容に関して書くのもどうかと思っています。それより,ユナイテッド,ガンナーズ双方の選手たちを称えたい.そんなゲームだったとだけまず最初に書いておくことにしたいと思います。


 120分を終了した時点でのスコアは0−0。


 カップ戦決勝,しかも何度となく対戦しているクラブを相手にしている,という条件を考えれば,綿密なスカウティングを背景に徹底的に相手の長所を消しに来ると考えるのが定石かも知れない。・しかし,チームカラーを互いに潰し合った,という印象は薄いのです。むしろ,互いのストロング・ポイントを真正面からぶつけ合った結果としてのスコアレスに私には感じられるのです。ある意味,カップ戦と言うよりもリーグ戦の延長線上にあるゲームのようかも知れないな,と。


 ただ,一点ゲームに差した影があるのだとすれば。


 ユナイテッドにしてみれば,PK戦に突入“してしまった”という意識がどこかにあっただろうし,ガンナーズにとってはPK戦にまで“漕ぎ着けることができた”という部分もあるかも知れません。両者を勝者と敗者に分かつ「契機」のようなものがあったのだとすれば,PK戦に入るときのチーム全体としての心理面かも知れない。そんなことを考えざるを得ないほどに,マンチェスター・ユナイテッドが後半に見せた攻勢は凄まじいものがあったし,ガンナーズはその攻勢に対してしっかりと対処し続けた。


 “Good Game”と言ってしまうと非常に軽い感じがするけれど,ユナイテッド,ガンナーズがその持てる能力をミレニアム・スタジアムのピッチに存分に叩き付けたと言っていいように思うし,FAカップ決勝に相応しい,濃密な120分だったのではないか,と感じます。


 とは言ったけれど,「他人事」だから言えることでしてね。


 イングランドびいきとは言え,ハイバリーよりもオールド・トラフォードを本拠とするクラブに共感する人間としては,45分ハーフのゲームなのか,90分ハーフ(1,2戦合計)のゲームなのか,という違いこそあれ「既視感」に襲われた,と正直に言っておくことにします。