欧州CL決勝トーナメント - 準決勝第1戦(その2)。

「鍔迫り合い」,と言うのが最も相応しいかな,と。


 スタンフォード・ブリッジとしては,先手を打つチャンスを失ったと見ることもできるし,リヴァプールとしても,重要な意味を持つアウェイ・ゴールを奪取できなかったことが第2戦で影響しないとも限らない。スコアレス・ドローという結果以上に,いろいろな思惑が第2戦に向けて見えてくるであろう一戦だったように思います。


 下馬評的には,チェルシー有利,と考えられていた部分があるように感じられます。しかし,レッズがそれほど不利な状況に追い込まれているようにも思えませんでした。


 チェルシーとレッズがタイトルを賭けて争ったのは,今季のカーリングカップ決勝ですが,その時もチェルシーに圧倒的に攻め込まれた,という印象はありません。実際,カーディフにあるミレニアム・スタジアムで行われたこのゲームは,開始1分に先制点を挙げたリヴァプールが1−0で逃げ切るかと思われた79分,フェレイラのフリーキックをクリアしようとしたジェラードのオウンゴールによってチェルシーが同点に追い付きます。その1−1の均衡は崩れることなく,レギュラー・タイムを終え,決着は延長戦に持ち越されます。均衡が破れたのは延長後半2分.ドログバのゴールによってチェルシーがリードを奪い,その5分後にはケズマンが貴重な追加点を挙げ,3−1とリードします。リヴァプールは3−1とリードを広げられた直後,ヌニェスのゴールによって3−2と追い上げるが反撃もここまで。ファイナル・スコア2−3でカップチェルシーに奪われます。


 さて,このゲームからも見えてくることでありますが。


 ジョゼ・モウリーニョラファエル・ベニテスともにカップ戦の戦い方を熟知したマネジャーであり,その考え方が選手たちにしっかりと浸透している印象を持っています。チェルシーに関して言えば,リーグ・チャンピオンズに相応しい総合力を持っていることは言うまでもないところですが,その総合力に加えて「カップ戦」に向けてチーム戦術をしっかりと調整してくることができるチームであること,対してリヴァプールは前任指揮官であるジェラール・ウリエ時代からカップ戦においてはしっかりとした結果を残しており,チーム戦術がリーグ戦よりもカップ戦に適している部分があること(=スタディオ・デッレ・アルピでの準々決勝第2戦がその証明になるはず)から,ファイナル・スコアとは別に面白いゲームになるのではないか,と考えていたわけです。


 さて,実際に第1戦はどうだったのか,チェックしてみますと。


 支配率だけを取り出して考えれば,チェルシーが優位にゲームを進めていたように思えますが,実際に印象に残っているのはチェルシーが決定的な場面でシュートが枠をとらえられずにいたことと,リヴァプールのカウンター攻撃が鋭さを持っていたことでありましょうか。


 序盤から,チェルシーは積極的に仕掛けていきます。基本的にリヴァプールの守備ブロックは丁寧にチェルシーの攻撃に応対していたが,チェルシーの前線はボールを受けてからが速く,守備応対が微妙にずれることがあり,守備ブロックのズレをしたたかに突いて決定的な場面を演出していました。しかしゴールマウスを的確に捉えたシュートに恵まれず,スコアレスで折り返します。同様にリヴァプールもスコアレスにとどまりますが,カウンター攻撃の鋭さに関して言えば,チェルシーを脅かすに十分だったように見えました。


 後半も同様に鍔迫り合いの中の均衡,と言うべき展開で推移し,結果として第1戦はスコアレス・ドローで終わります。


 では,第2戦に向けて双方を考えますと。


 チェルシーとしては,「堅守速攻」をイメージしてくるのではないでしょうか。相手が攻撃的に来ることは想定範囲内で,むしろ攻撃に意識が傾いて前掛かりになるところを突きたいのではないでしょうか。第1戦がスコアレスだったこともあり,アウェイ・ゴールを奪取することが至上命題になってくると思われます。モウリーニョとしては,カーリングカップ決勝を具体的にイメージして,延長戦までをも視野に入れたプランを練っているのではないか,と推理しています。


 対して,アンフィールドで迎え撃つ立場のリヴァプールですが。


 積極的に仕掛けてくることは確かでしょうけれど,かなり慎重にゲームに入ってくるのではないか,とも思います。カップ戦である以上,前半早い時間帯に先制点を奪い,ゲームを優位に進めたいのは言うまでもないところでしょうが,最後方をケアせずに攻勢をかけることで逆襲を受けることは避けたい。その意味で,スタディオ・サン・シーロでのACミランーPSVアイントホーフェン戦をかなり意識してレッズの指揮官は選手たちに意識付けするのではないか,と考えています。


 ともかく,すべてが第2戦にかかっていることだけは確かです。アンフィールドでのゲームが興味深いものになることだけは間違いない,と思っています。