欧州CL決勝トーナメント - 準決勝第1戦(その1)。

カルロ・アンチェロッティにしてみれば。


 フース・ヒディンクのゲームプランを結果的には見事に封じたのですから,第2戦に向けて選択肢は大きく広がったな,と考えているのではないでしょうか。


 対して,ヒディンクにしてみれば前半もほぼミランの攻撃を跳ね返し,後半はゲームを支配していたにもかかわらず,結果が伴わなかった、と見ているかも知れません。今までは常に先手を取って優位にゲームを進めてきたPSVが,ホームであるフィリップス・スタディオンでどのように逆襲に転じるか.かなり興味深いゲームになりそうです。


 いきなり,第2戦プレビューのようなことから始めてしまいましたが。Ernestです。


 チャンピオンズ・リーグ(欧州カップ戦)もいよいよ準決勝であります。


 まず,スタディオ・サン・シーロでACミラン−PSVアイントホーフェン戦が行われたわけですが,少なくとも後半早い段階でミランのゴールネットを揺らすことができなかったこと(=同点に追い付けなかったこと)がPSVとしては悔やまれるところでしょう。また,ヒディンクもメディアへの応対で認めているように,1−0でゲームを終えることができていれば,第2戦での戦い方にある程度の自由度が確保できたはずです。しかし実際には,後半ロスタイムの追加点によって2点のビハインドを負ってしまったことで,第2戦はゲーム立ち上がりから積極的に仕掛けていかなければならなくなっています。それは,カウンター攻撃によって追加点奪取を狙うアンチェロッティの術中にはまる可能性が高まることも同時に意味するでしょう。難しいハンドリングを強いられることになるように思います。


 さて,ゲームを簡単にチェックしてみることにしますと。


 前半,後半ともに終了間際の時間帯に失点しているわけだが,その性質は大きく異なるように見える。


 前半に関して言えば,早い段階での先制点奪取,というカップ戦の文法に忠実なACミランのゲーム・プランを(相手の決定力不足も含めて)最終ラインで何とか抑え込み続けていた,と評価していいように思う。逆に言えば,前半に関してはボールを支配し,ゲームをコントロールしていたのは明らかにミランであった,と言える。そんな状況から,41分にACミランがゲーム開始直後から繰り返していた攻撃の形−PSV守備ブロックの裏を突くパスを繰り出し,前線はそれに反応するようにラインの裏に積極的に飛び出す−が結果に結び付く。カカのスルーパスを受けたシェフチェンコは冷静にディフェンダーをかわし,GKとの1対1から先制点となるゴールを奪う。このまま前半を終了し,ゲームを1−0で折り返す。


 それまで何とかACミランの攻撃に対して応対していたPSV守備ブロックが破綻をきたした一瞬を,カカとシェフチェンコのコンビネーションにしっかりと突かれた,という形になるように思う。


 対して,後半は立ち上がりから積極的にPSVが攻勢をかける。PSVは後半だけで11本(ゴールマウスを捉えたものについては4本)ものシュートを放ち,後半に関してだけ言えばゲームを積極的にコントロールしていたと言える。しかし,決定力を欠いていたために同点に追い付くことはできずにゲーム終盤を迎えてしまう。逆にアディショナル・タイム,トマソンに第2戦に大きな影響を与えるであろう追加点を奪われてしまう。PSVとしては,積極的に攻め込みながら得点を奪うことができず,心理的に追い詰められていた(=焦りを生じていた)であろう時間帯での失点だけに,チームに与えるダメージは先制点の時よりも大きく,この追加点によって,第2戦の戦い方をPSVは大きく限定されることになったように感じる。


 ヒディンクの失望感は,メディアへのコメントからもうかがえます。


 メディアへのコメントに失望感を感じる,その理由は「後半,ゲームを巧みにコントロールし続けたものの,ファイナル・スコアにそのコントロールの努力が反映されなかったこと」にあるのではないでしょうか。ゲームを論理的に組み立てても,最終的な部分で偶然性が大きく影響するのがフットボールである以上,このような結果はあり得べきものではありますが,欧州カップ戦準決勝,という大舞台ではちょっとしたミスが大きく結果に影響してしまいます。そんなことも,ヒディンクの苛立ちの原因だったのかも知れません。導入部でプレビュー的に触れましたが,2−0というファイナル・スコアはヒディンクとしては想定外の結果だった,と言えそうです。


 逆にアンチェロッティにしてみれば,第2戦を有利な条件で戦えるわけです。であればこそ,「恐らく,第2戦は簡単なゲームにはならないであろうから,我々は自信過剰にならないよう,気を付けておかなければならない」というアンチェロッティのコメントは,欧州カップ戦の怖さを知る人間の,重みを持った言葉に感じられます。


 さて,スタンフォード・ブリッジでは準決勝のもうひとつのカード,チェルシーリヴァプール戦が行われます。カーリングカップヤマザキナビスコカップに相当するイングランドのリーグ・カップ)の決勝と同一のカップ・タイですが,ミレニアム・スタジアムで行われた決勝戦ではチェルシーに煮え湯を飲まされているだけに,雪辱戦という意味合いもあります。イングランドびいきとしては,すでにこのゲームが気になっております。