やはり、「カップ戦」。

付けられたタイトルがあまりにインパクト重視なのが,「!?」ではあるけれど。


 ついでに言えば,古豪にも敬意を払え!とも言いたいけど(ど〜せ,コラムをキャッチーにするための原稿作法なのだろうけど)。


 失礼しました。


 ユニフォーム・サプライヤーアディダスであれば,ビッグイヤーに示される数字は“4”。充分に古豪なのです。「小」と言われる覚えはない!と思ってしまったわけで。イングランドびいきなものですから(ご存じですよね),お許し下さいませ。


とまあ,一通りケチを付けておいて言うのもナンですが,今回のコラムには賛同する部分が多いな,と思っております。ということで,今回は杉山センセのコラム(gooスポーツ - NumberWeb)を参考書にしながら書いていきたいな,と。


 前回,“「勝てば官軍」への反論”というエントリの中で,イタリアン・スタイルが単純に最良のシステムというわけではなかろう,というニュアンスのことを書きましたが,リヴァプールを率いるラファエル・ベニテス,PSVアイントホーフェン指揮官であるフース・ヒディンクは自らの戦略をチームにしっかりと落とし込み,欧州カップ戦において結果を出していることを評価したいのです。


 ここでは,結構しつこく書き続けていることですけど。


 ポゼッション・フットボールにせよ,カウンター・アタックを主戦兵器とするフットボールにせよ,ピッチに表現されているシステムそのものだけが決定的な意味を持つわけではないはずです。最も重要なのは,「現有戦力の能力を最大限に引き出すためにはどのようなスタイルが最適か」という前提論だと考えているのですが,ベニテスヒディンクはこの部分が非常に明確であるように思うのです。


 次に,杉山さんに同意したい部分としては「守る」という言葉にも多様な意味があるというニュアンスの論を進めていることでしょうか。「守備的」という言葉から一般に連想される「消極的」であるとか,「リアクティブ」というイメージだけでは説明できないゲームを実際に敵地であるデッレ・アルピリヴァプールが展開したことは杉山さんが言うように確かです。ボール・ポゼッションと引き替えにゲーム全体の主導権を握り続けたと表現してもいいリヴァプールの第2戦における戦略は,専守防衛だけを視野に入れたものではなく,高い位置での攻守の切り替えを可能にするためのプレッシング・フットボールを守備的な組織戦術に応用したものだろう,と私も考えています。


 また,PSVアイントホーフェンを考えれば,僅差を勝ち抜くチャンピオンズ・リーグのような戦いぶりだけでは,リーグ・テーブルの最上位に位置し続けることはできないはずです。状況に応じて,攻撃力に使うべき組織戦術を柔軟に守備的な面に振り向けることができるのではないでしょうか。


 両クラブの指揮官に共通する部分は,攻撃力,守備力だけではない総合力が試されるリーグ戦での戦い方と,僅差であれ「結果を残す」ことが至上命題となる欧州カップ戦とで戦い方を微調整できる,この柔軟性(戦術的な基盤を外さない,という意味も当然に含まれますが。)にあるのではないか,と考えています。その意味で,リヴァプールの躍進は確かにうれしいけれど,それは“アート”と表現されるものではないだろう,と。むしろ,すこぶる論理的なものだろうと考えているのです。


 最後は,やっぱり杉山さんとはスタンスが異なるわけですけどね。


 いわゆるビッグクラブが敗退し,ノーマークとされるクラブが躍進する背景には,「カウンター・フットボールの躍進」というよりも,「いかにカップ戦を勝ち抜くか」,というテーゼに基づいて,本来のチーム・コンセプトを微調整できるかという修正能力の差があったのではないか,と考えているのです。恐らく,伝統的に守備戦術への習熟度の高いイタリア勢はカップ戦にチームをアジャストしやすかったために,「躍進」と受け取られたのではないか,とシロート目ながら考えています。


 大会規模が大きくなり,ゲーム数も飛躍的に増加したことで“チャンピオンズ・リーグ”と改称されたけれど,そこで行われているゲームは過去と何ら変わることはない。端的に表現するならば,やはり現在にあっても“チャンピオンズ・カップ(「欧州カップ戦」)”なのだ,ということでしょう。