蹴球協会杯−準決勝。

確かに,チャリティ・シールド(現在ではコミュニティ・シールドでありますな。)で何回も顔合わせしているカードではあるのですが。


 「順当な対戦カード」とまで言ってしまうと,勝者,敗者双方にとってあまりに失礼な気もするのですよね。


 何と言うか,“ビッグタイトル”ではないですか。


 どのクラブにしても,本気でカップを獲りに来ていると思うわけです。その努力を否定されたみたいな感じがするわけです。ましてや,敗者の立つ瀬がなくなってしまうように見えるし。


 まいど前置きが長くて失礼しております。Ernestです。


 さて,FAカップ準決勝であります。


 土曜日にアーセナルブラックバーン・ローバーズ戦,日曜日にマンチェスター・ユナイテッドニューカッスル・ユナイテッド戦がミレニアム・スタジアムで行われたわけですけれども,ニュートラルに見れば「準決勝のレベルまで来れば,やはり実力あるクラブが勝ち上がる可能性が高い」という感じがします。


 ではありますが,私のホンネは話のマクラに書いた通り。そこで,今回は(基本的に)敗者側からFAカップ準決勝を書いてみたいな,と。


 まず,第1戦で先手を取りながら敵地での第2戦でスポルティングの猛攻をかわすことができず,結果的にUEFAカップ準々決勝での敗退を余儀なくされたニューカッスル・ユナイテッドであります。やはり,中2日で守備ブロックの修正をかけるのは難しかったように見えます。


 ゲーム序盤から主導権をマンチェスターに握られ,6分にはクリスティアーノ・ロナウドに突破を許す(結果的にはロナウドは警告を受けてしまうのですが。)など,守備ブロックの安定性に不安を抱える立ち上がりだったと評価していいと思う。そんな流れの中で19分にはエース・ストライカーであるファン・ニステルローイに先制点を奪われてしまう。その後もウェイン・ルーニーに決定的な場面を作られ,前半ロスタイムにはスコールズに追加点を奪われる。


 一方,先制点を奪われた直後からニューカッスルも積極的に攻撃を仕掛け,決定的な場面を演出するがフィニッシュに正確性を欠いたり,マンチェスターの堅守に阻まれ,得点奪取には至らず,結果的に2−0で前半を折り返す。


 後半になってもマンチェスターにゲームの主導権を握られるという基本的な図式は変わらず,58分にはニステルローイに3点目を奪われ,70分,71分にはフリーキックから得点機をマンチェスターに与えてしまうが,GKのクリアによってピンチを脱する。しかし,76分には4点目をクリスティアーノ・ロナウドに奪われ,ゲームを決定付けられてしまう。


 ニューカッスルは,前半に比べて多くのチャンスを作り出すものの,59分に挙げた得点だけにとどまり,ファイナル・スコアとしては1−4で準決勝敗退となる。


 この敗戦でも,攻撃ユニットが有効に機能せず,また,守備ブロックが不安定性を露呈していることが見えてきます。UEFAカップやFAカップで見せてきた,チーム・バランスの良さが明らかにトーンダウンしている。プレミアシップでのダイアー,ボウヤーの退場劇によってチームのプライマリー・バランスが崩れてしまったことが,チームに暗い影を落としているだろうことが感じられます。プレミアシップにおいてUEFA圏内を狙うにも,かなり修正は難しいのではないか,と言わざるを得ないように思います。


 続いて,ブラックバーン・ローバーズでありますが。


 ゲーム序盤から効果的にガンナーズの攻撃を抑え込んでいたが,かなりチームに負担をかける結果になっていたように見える。22分にはフィットクロフトが,30分にはトンプソンがそれぞれパトリック・ビエラに対するファウルで警告を受けている。このことを裏返してみれば,前線,中盤からタイトにガンナーズに対して(かなりストリクト・マンマークに近い)マークを付けていたことを意味しているように思う。しかし,前半終了を目前にした42分に先制点を奪われ,1−0で前半を終了する。
 後半,ブラックバーンは立ち上がりから良い形での攻撃を仕掛けるが,得点を挙げるには至らず,チームをより攻撃的にシフトするべく51分の戦術交代を機に基本陣形を変えてくる。それでも追い付くことはできず,逆にゲーム終了が見えてきた86分,ロスタイムに入った90分にゴールを奪われ,結果3−0でゲームを落としてしまう。


 特に前半から受ける印象としては,守備的なゲーム・プランだったように感じます。


 しかし,早い段階で先制点を奪えないと,守備にかかる負担によって,逆に相手に自由に攻撃を組み立てられるスペースを与えてしまうことになりかねない。そんな図式に陥ってしまったのではないか,と思うのです。ある意味,カップ戦の難しさを見せてくれたゲームだと思います。