削がれる緊張感。

ホーム・アンド・アウェイスタイルをとるカップ戦の醍醐味とは,何でしょうか。


 どんなに圧倒的な攻撃力を誇るクラブでも1点差に泣くかも知れない,独特の緊張感にこそあるのではないでしょうか。通常であれば,「退屈さ」の代名詞とされかねないようなスコアレス・ドローや,1−0のゲームこそ,カップ戦が心理戦であることの象徴,と言っても言い過ぎではないように個人的には感じています。


 Ernestです。こんばんは。


 そんなことを思ったのは,スポナビに寄稿されている東本貢司さんのコラムを読んだのがきっかけです。


 「ホーム・アドバンテージ」は,ホーム・スタジアムで有利にゲームを進める上で最も重要な要素,そのひとつだと確信しています。しかし,すべてのクラブにとって同じようにホーム・チームに有利に働くとは限らないようにも感じています。
 本質を明確に説明することができず,場合によってはネガティブ・ファクタになる危険性も併せ持つ「ホーム・アドバンテージ」が,アウェイを戦うチームの得点を有利にカウントする必然性を持つまでに意味を持つのか,と問われれば正直なところ答えに窮してしまいます。むしろ東本さんが指摘するように,


 

 「フットボールの場合なら同じピッチに立つ90分間は『対等』と考えるべきだ。・・・(中略)・・・仮にもプロの世界、そんな利(不利)で数多のスポーツを語るなど、およそ次元の低い話ではないか」


という意見が妥当性を持っているように思います。


 効率的な大会運営,という実際的な議論も確かに必要だろうけれど,それ以上に目の前のゲームが緊張感にあふれたものであることの方がはるかに重要ではないでしょうか。現行ルールでは,アウェイ戦で1点差程度にまで追い詰めておいて,ホーム・ゲームでは守備的なゲームを進めて逆襲から1−0.ということでも十分に勝ち抜けることになります。もちろん,これはこれで徹底したゲーム・プランだし,押し通せるだけのチーム力がなければ不可能な話ですが,明らかに第三者的には緊張感に欠ける第2戦,ということになるのではないでしょうか。
 カップ戦の神髄が高度な駆け引き,それゆえのロースコアにあるとすれば,延長戦,場合によってはPK戦(可能ならば,FAカップのように引き分け再試合がもっともフェアであるように感じるけれど。)をも視野に入れるべきかも知れません。


 カップ戦にはリーグ戦とは一味違う,カップ戦なりの楽しみ方がある。


 カップ戦独特の魅力をスポイルするのではなく,徹底的にしゃぶり尽くすための大会運営形式であって欲しいものだ,と思っています。その点,(開催時期など,いろいろ改善しなければならない要素はあるけれど)天皇杯ヤマザキナビスコカップカップ戦の面白さを十分に持っているものだ,と感じています。観客動員数などで明らかにリーグ戦に水を開けられてはいるけれど,カップ戦の持つ独特の雰囲気はリーグ戦とは違う。1点の持つ重みは,リーグ戦と同等,場合によってはそれ以上になるのだから,もっと注目されていい。そう思うです。