ゲーム回顧とグループAの思い出。

実はこの記事,最初は別館にアップしたものであります。


 ありますが,よく読んでみるとクルマの話を書いているはずが,いつの間にやらフットボールの話に移動していて,何ともカテゴリ分けが難しくなってしまいまして。ならば,こちらにも同じようにアップしておこうと思い,少々オリジナルを加筆訂正した上でアップしてみた次第であります。


 というわけでいきなり背景説明からはじめております。Ernestです。


 その時は何とはなしに外を眺めておりました。


 純粋にゲームを眺めよう,とは思って敷島公園に足を運んではみたものの。なかなかそういう訳にはいかないものであります。結局はホームチームに肩入れして見ていたもので,あれこれと思いをめぐらせているうちに,高崎駅に直行するシャトルバスはバイパスに入っておりまして。なかなか迫力のあるエグゾースト・ノートが聞こえてきたな,と思って最初に目に入ってきたのがチェイサー(JTCCでも活躍した,あのモデルでありますな)。「最近はこういうクルマに乗っている走り屋さんも多いよなぁ・・・」と思ってはみたのだけれど,“トヨタ系統”ストレート6のエンジン音とはどうも違う。だいたい,マフラーが交換されていないのだから,低音が私の耳にまで届くはずもない。


 でも,どこかで聞き覚えのある音には違いない。自然に,思考がついさっきまで実際に見ていたゲームから,バスの近くにいるだろうクルマの推理に移っていました。


 よく見てみれば,隣の車線にいたのが,BNR32スカイラインGT−R)。


 音の主は,実はこちらだったわけです。しかも,マフラーは良い色に焼けているオール・ステンレス(か,あるいはチタンのような)で,GT−Rを特徴付けるリア・ウィングは取り外されて,ニスモ仕様にだけ装着されていたリップだけがトランク・フードに残っている。ノーマル的な雰囲気を漂わせてはいるものの,実際にはかなり走りを意識しているような感じのモディファイが施されていました。


 このクルマのグループA仕様はデビュー戦からポールポジションを奪い,1,2フィニッシュをやってのけています。その後,グループAからBTCCをお手本にしたクラス2仕様のツーリングカーへと規定が変更になるまで,29連勝を飾っています。表面的に見れば,「栄光に包まれたクルマ」であります。


 ありますが,先代であるGTS−Rで必死になってフォード・シエラを追い掛けていたからこそ,「グループAで勝つためには,何が必要なのか」が見えてきたのだと思うし,フォードの後塵を拝していた悔しさがBNR32を生み出した原動力だった,と聞き及んでいます。


 確かに戦績だけを見ればGT−Rの方が上に決まっています。いるけれど,私としてもR31というレーシング・マシンとしては決して素性が良いとは言えないクルマで,必死に当時最強のグループA車両として君臨していたフォード・シエラ・コスワースを追い掛け,結果的にはシリーズ・チャンピオンまでを手にした当時の“リーボックスカイライン”のイメージの方が鮮烈に残っていたりするのです。


 彼らもJFLの段階までは言わば,スカイラインGT−Rが出てくるまでのフォード・シエラのような状態だったのだろう,と思うのです。ある意味,プロフェッショナルを現実的な射程に収めているわけだから(もちろん,最終段階でプレッシャーを感じていたのでしょうか,失速を経験して3位という結果にはなっているけれど。)クラブ,チームの体制は比較するまでもなかったはずです。しかし,Jに参入してからは立場が劇的なまでに変化してしまったのではないでしょうか。覚悟していただろうけれど,予想以上だったことで当事者が戸惑っているのではないかな,と思うのです。


 言わば,フォードのテールを必死に追い掛けながら,少しでも順位を上げようともがき続けていたスカイラインGTS−Rへと置かれた立場は変わっているのだろうな,と思うのです。であれば,相手の存在が大きく見えているかも知れないし,それだけに心理的にもあせりが出てきてしまうのではないか,とも。


 けれど。


 初得点を挙げたことで,一定の光明は見えてきたのではないでしょうか。それだけに,早い段階で同点に追いつかれたとしても浮足立たないこと,だと思うのです。そして,失点後にも浮足立たず,冷静にゲームを進める(=チャンスと見れば鋭く逆襲を仕掛ける)ためにも,守備面での組織戦術に関しては再確認しておかないといけないのではないかな,と。正直,後半での守備応対の遅れはちょっと気になった部分です。


 ボールキープをしているときには,不用意な形でボールを奪われないようにしよう。アウトサイドでボールを持っているときには,周りが積極的にボールを呼び込む動きをしてあげよう。すぐに中央に絞るのではなく,トップとリターンを交換したりすることで,ディフェンスをサイドに引き出してやりたい。もうちょっと相手ディフェンスを揺さぶることができると,もっと楽に攻撃が展開できると思うのだけれど。それだけでも違ってくるはずだ,と感じます。


 個人的に,耐久的要素が強いレースとフットボールとは共通点がある,と思っています。


 それは,「マシンの素性(=選手個々の能力)だけで勝ち負けが決まるわけでは決してない」,ということです。マシンも重要だけど,それだけではない。ドライヴァもただ速いだけでは,マシンを何時間か後のフィニッシュラインに持っていくことはできない。また,メカニックなどの裏方の力も非常に大きい。結局,総合力であり,どれだけいい準備をするか,などが大きく関わってくる,ということなのでしょう。そして,この図式はフットボールにも当てはまるように感じられるのです。1+1が素直に2にならずに,それ以上になったり,逆に「負の連鎖」に追い込まれたりすると2を大きく下回ってしまう。ともにそんな競技ではないかな,と思うのです。


 「勝つために何が足りないのか。どこを修正すればもっとバランスが良くなるのか」を考え続けることができれば。そして,そのためにクラブが全体として同じ方向を見続けることができるならば。決して遠くない未来にご褒美はもらえるはず,と結局はフットボールのことに考えが戻っていた頃,GT−Rのエグゾースト・ノートはどこかへ行っていました。