ラグビー日本選手権−決勝展望。

東芝府中ブレイブルーパスが3冠奪取に失敗したことで盛り上がりに欠ける,とか言ってませんか?


 正直言えば,準決勝直前までブレイブルーパスヤマハ発動機ジュビロで決勝は戦われるであろうことはほぼ既定路線だろうな,と思っていたです。トップリーグを制し,マイクロソフトカップも奪取しているブレイブルーパスに付け入る隙はなかなか見つからないのではないか。また,トヨタ自動車ヴェルブリッツは,ファイナル・スコア以上に苦戦した印象があるし。


 でも,勝負事ってのは分からない。


 というわけで,ギャンブラー的才能(だけではないが)にはかなり問題があるErnestです。
 しかしですね。ブレイブルーパスを退けたヴェルブリッツの非常に集中した戦いぶりは,ファイナリストに名乗りを挙げるだけのものであったはず。また,ゲーム時のコンディションを冷静に見極め,ゲーム・プランをキック主体のものに冷静に切り換え,80分プラス押し切って見せたNECグリーンロケッツだって,決勝進出は妥当な結果でありましょう。


 では,決勝はどうなるか。また,独断と偏見でプレビューしてみることにします。


 まず,前回の準決勝プレビューと同様にトップリーグの対戦を参考書その1として用意してみます。
 トップリーグでは,終盤の第11節(12月26日)にNECグリーンロケッツをホーム・瑞穂に迎える形で対戦しており,その時のファイナル・スコアは30−35。グリーンロケッツヴェルブリッツを1トライ差で破っているわけです。この時のゲーム・スタッツはなかなか面白いのです。
 てはじめに最も重要なトライ数(前後半合計)を見ると,ヴェルブリッツが4トライを挙げているのに対して,グリーンロケッツは3トライ。攻撃面だけを見ると,ヴェルブリッツの攻撃はしっかりと機能していたわけです。何が勝敗を分けたのかと言えば,コンバージョン,ペナルティ・ゴールを合わせてのゴール数なのです。トヨタ自動車はコンバージョン成功率が50%(2/4)に対してNECは34%(1/3)。ペナルティ・ゴール数に関してはトヨタ自動車が2本を成功させているのに対して,NECは5本を成功させています。
 次に,両チームの日本選手権の戦いぶりを参考書その2として,参考書その1に加えてみます。どう見ても,グリーンロケッツのストロング・ポイントはキック力に裏打ちされたゴールの正確性でしょう。選手権初戦となる,福岡サニックスボムズ戦(2回戦・12月12日)では,前後半合計で8トライを挙げていますが,コンバージョンをそのうち7回成功させています。対ジュビロ戦でも,キックを生かした戦略で勝利を収めている。となれば,トヨタは22mラインよりも深い位置での不注意なファウルは極力避けなければならない,ということが言えるかと。
 で,このことと大きく関連しますが,ヴェルブリッツの生命線になるのは“いかにファースト・ディフェンスの段階で集中し,激しく相手に行けるか”という点になる,とワタシは考えます。東芝府中を破った最大の要因は,ファースト・ディフェンスの激しさ,選手の集散の速さによってゲームの主導権を握ることに成功したからだ,とワタシは感じています。ファウルには十分注意しなければいけないけれど,ディフェンスによってゲームのリズムをつかんだことを思えば,積極的なディフェンスが求められます。対東芝府中戦で見せたゲーム・プランを再現できるかに,決勝の帰趨がかかっているはずです。


 トップリーグでの直接対決を見る限りはほぼ互角。


 となれば,ゲームの主導権をどちらが先に掌握するか。主導権を握ることで,心理面で相手に優位に立てるかどうか。言い換えれば,相手に決して先手を取られないことが大きく勝敗の行方を左右する。本当の意味で,「決勝らしい決勝戦」になるはずです。今から期待しています。