正規ルートのアンブッシュ・マーケティング!?

・・・ということになりますよね。


 たとえば,大規模なスポーツ・イベントのプリンシパル・パートナーがとある飲料メーカだったとします。大会を主催する競技団体は,彼らの権利を最大限に保護すべく,スタジアム内で販売されるソフトドリンク,アルコール類すべてをその飲料メーカのものとすべく対策を取っています。にもかかわらず,大会当日,飛行船がスタジアム上空を飛来し,その機体にはライバル・メーカのロゴ・マークが。


 ・・・実際問題として,これはかなり難しい。実際あり得るとすれば,紙コップを意図的に普段通りに使ってしまうことで,スポンサーとは違うロゴが露出してしまうであったり,ライバル・メーカが観客にお願いして,ロゴが大きく描かれている服を着てもらうとか。


 ごく大ざっぱに「アンブッシュ・マーケティング」を理解すると,こんな感じでしょうか。今回の朝日はスポンサー契約を締結したにもかかわらず,メディア露出を拒否されたのだから不満でしょう。日本ラグビー協会(JRFU)とのパートナー契約は有効に成立しているにもかかわらず(=スポンサー・フィーを拠出しているにもかかわらず),スタジアム,あるいはゲームを放送しているメディアを通しての宣伝広告効果が見込めないとすれば。だいたい,活字メディアと映像メディアということでパートナー契約としても直接的にバッティングする関係にはないわけですから,NHKがJRFUに対して抗議をするべき性質の話ではない。


 そりゃあ,朝日新聞にしてみればたまったものではありませんね。


 こういう「被害」まで考えて,日本ラグビー協会はパートナー選定をしたのでしょうか。ということで,“公共性”をキーワードにした前回エントリの続編です。


 しつこくて恐縮ですが,Ernestです。


 いままで,ラグビーフットボールはアマチュアリズムを重んじてきました。


 しかし,大会規模はアマチュアリズムに立脚した運営では賄いきれないほどに大きくなってきています.必然的に,大会に協賛していただけるパートナー企業を広く募ることになります。そのときに,“マーケティング”とか“ライツ・ビジネス”という意識が少しでもあれば,もっと交通整理がスムーズだったと思うのです。例えば,活字メディアを担う「朝日新聞」とパートナー契約をするとしてもスタジアムでの看板掲出という手段を採り,レフェリー・ユニフォームへの広告掲出に関しては他のパートナーとする,などの対策はできたはずです。


 その点,少々やり過ぎかな?という部分もありますが,FIFAマーケティングの手法は参考になるはずです。高額なパートナー契約ではあるけれど,「独占権」の内容は非常にパワフルです。2002年に実際に会場に足を運んだひとならば,何となく私の言っていることが分かるはずです。いつもの競技場の風景がまったく違ったものになっているのみならず,紙コップだってアメリカンな筆記体だけが目立っていたはずです。2006年に向けてチケット購入を考えておられる方ならば,決済の段階になって思い当たることがあるはずです。とある会社以外のカードは使えないはずですから。


 「パートナー」になってもらうからには,ここまでしないと!という覚悟が見える,と言いますか。


 FIFAマーケティングによるパートナーの権利保護の実際,という部分を考えれば,パートナー選定には慎重さも必要,という結論もまた導けるような感じがします。NHKも放映権だけのことで主催サイドに名を連ねているわけではないのでしょうから,JRFUとパートナー選定について協力関係を密にして行かなくてはならない立場です。朝日の権利関係をどう保護するのか,一緒に考えないといけない。モメている場合ではないはずです。


 選手たちがオープン化(プロ化)したのであれば,運営主体も(良いか悪いかは別として)プロフェッショナルとしての対応が求められる時代になってきているのかも知れません。