研磨・加工職人はいるか。

ちょっと思うところあって,ダイヤモンド関連のサイトを調べてみました。


 Ernestであります。こんばんは。
 話のマクラに,ちょっと付け焼き刃で恐縮ではありますが,ダイヤモンドの講釈などを。


 ダイヤモンドの品質評価基準として,一般に“4Cs”が知られています。
 その評価基準の中に,カット・プロポーション(切削,研磨によってダイヤモンドの輝きを最大限に引き出す整形行為,とでも言いましょうか。)という評価軸があります。他の評価基準であるカラット,クラリティ,カラーは原石の状態に全面的に依存するものですが,カット・プロポーションは人間の能力にすべてが委ねられている,と言っていいものと思います。この評価自体,絶対的なものではないですが,人間の手を経て初めてダイヤモンドが商品として評価の対象たり得る,というのは何か示唆するものがある,と感じるわけです。


 よく高卒ルーキーや,ユース昇格組などの新規入団選手を「ダイヤの原石」などと表現します。


 しかし,入団から3〜4年程度で“戦力構想外”との評価を受ける選手もまた少なくありません。では,彼らが「ダイヤの原石」たり得なかったのでしょうか。決してそうではないはずだろう,というのが,今回書いていこうと思っている話,その取っ掛かりであります。


 Jリーグ選手協会のウェブサイトに,2004〜05第2回合同トライアウト終了後に原博実監督(FC東京)がインタビューに答えた内容(JPFAオフィシャル)が掲載されていて,その中で,興味深い内容があります。
 要約するならば,“セルフ・モチベーション(普段からのプロ意識,とでも読み替えるべきでしょうか。)”とも呼ぶべきものが,所属していたクラブでは練習中の積極的なアピールなどの具体的な形で見えなかったことが,戦力外通告という結果につながったのではないか,と原さんは答えているわけです。
 この内容を受けると,同様にインタビューに応じている安達勇輔監督(横浜FC)の談話(JPFAオフィシャル)が大きな意味を持ってくるように個人的には感じます。安達さんはトライアウト制度に対する評価,参加選手の大まかな分析のあと,特に若手選手について,サテライト・リーグなどで充分な試合経験を積めないままに戦力外通告を受け,トライアウトに参加する状況となっている選手たちが多いことを指摘しています。その上で,若手選手が試合経験を積める環境整備の必要性とJ2が若手選手の実戦経験の場としても機能していけるのではないか,ということをコメントしています。


 トップレベルのクラブのコーチング・スタッフや強化担当者の視線は中期的な選手育成,強化のための選手育成というよりも,即戦力的な選手獲得に傾斜しているのではないか,と感じています。それゆえに,高卒ルーキーなどの新規入団選手であっても,比較的短期間でトップチーム昇格などの具体的な結果が求められるのではないでしょうか。原さんのコメントは,そのようなことを間接的に言っているような感じがします。


 しかし,それでは見落とされる才能が出てくることは避けられないように感じます。また,選手強化,育成に費やされる時間が短くなることで選手間のコンビネーションを基盤とするチーム構築が難しくなり,結果的にチームのスタイルが明確に感じられないクラブになってしまうようにも思うのです。


 対して,J2,JFLなど下部リーグに属するクラブでは,財政規模が小さいことが選手育成に関してはポジティブに働くことになるように感じます。


 積極的な補強戦略に打って出るとしても,クラブの財政状態が安定していなければ不可能。となれば,安達さんが言うようにJ2やJFLが潜在能力を持った選手たちに実戦経験を積ませる場としても機能すること(=低コストで戦力調達が可能になることも同時に意味しますから,下部リーグにとっては,メリットの大きさが魅力になるはずです。)は,各クラブが戦力をボトミング・アップさせるためにも高い効果を発揮するのではないでしょうか。
 それは同時に,下部リーグのコーチング・スタッフに戦術面での経験とともに選手育成,強化の経験を積ませることにもなります。となれば,強化に関するチーム・マネージメント経験はその前段階,どのように原石(=ポテンシャルを秘めた若手選手)を加工,研磨(=指導強化)すれば魅力的な商品(=プロフェッショナル・フットボーラー)に変えることができるか,というような職人的資質を磨くこと,と形容できるように感じます。そのような経験は,きっと選手,コーチング・スタッフ双方にとって有益であるはずです。


 そうなれば,J1を頂点とするピラミッド型のリーグ形態に厚みが増すのではないでしょうか。


 ある選手が,各クラブがシーズンを迎えるにあたり体制を発表し,本格的にチームが指導するこの時期になってようやく移籍決定,という情報に触れて,そんなことをふと考えてみました。