国見対鹿児島実業戦(第83回全国高校選手権・準決勝)。

昨季を締め括ったのが「国立霞ヶ丘」。


 バイタル・エリアへ絶妙のタイミングで走り込むプレーが常に印象に残る「要注意人物」に先制直後の同点ゴールを決められた後,焦りのためか半ば自滅的にゲームの流れを手放してしまった印象が苦く残っている。そんなゲームが年末に展開されている場所なのですが。


 事始めも「国立霞ヶ丘」で,というわけで行ってきました。


 なかなかのゲームでしたよ。国見ファンは東京でも多いんですな。ちょっとビックリです。


 Ernestです。こんばんは。


 スタンドレベルで判断する限り,今日の国立はホーム側ゴール裏方面からの強風が基本的に収まらない状況だった。恐らく,ピッチレベルでも基本的には強風は変わらず,時に巻くような状況ではなかったか。そんな気象条件もあってか,前半風下にエンドを取った国見は慎重な立ち上がりをしているのではないか,とゲームを見始めた当初は思っていた。


 一方,風上から攻め下ろす形になる鹿児島実業は前線へのロングボール,というよりもむしろ中盤からの厳しいプレッシングから手数を少なくしたカウンター・アタックというピクチャーをピッチ上の選手全員が共有しているような印象だった。


 前半の基本的な図式は,風上であることを最大限利用とした鹿実と,それに中盤〜最終ラインのフィジカルな対応で対抗し,ロングボールを中心にカウンターアタックを仕掛けようという国見と受け取れた。攻撃の手綱を決して緩めない鹿児島実業が何となく攻め切れていないような,ちょっと膠着したような時間帯の後,ゴール前からこぼれたボールを前線に送り返そうとしたボールがロビング性のパスになり,それがそのままゴールマウスに吸い込まれ思いがけない先制点を鹿実が奪う。その後,国見もやっと覚醒したように攻撃的にゲームを組み立て始めるのだが,鹿実の中盤の強烈なプレッシングの網にかかるケースが多く,サイドを有効に割りながらクロスをゴール前に供給,という場面は少なかった。


 後半,風上から攻め下ろす形に変わった国見は前半以上に積極的にロングレンジのパスを多用し,ゴール前にボールを集めようとする。対して鹿実の守備ラインは丁寧に対応してきたが,カウンターからはじまる中盤からの突破という場面では鹿実ディフェンダーがたまらずにファウルを犯し,国見はゴールを射程に収める位置でフリーキックを得る。しかし,そのチャンスも鹿実の壁に阻まれる。逆に鹿実は風下から攻め上がる状況にもかかわらず攻撃的な姿勢を貫き,追加点を奪いリードを2点に広げる。国見はさらにパワープレーを強いられることになるのだが,鹿実は冷静にそれに対処し,決勝へ駒を進めた。


 ・・・といった感じのゲームでした。


 その中で印象に残っているのは,“ハーフコートカウンター”を強烈に意識しているであろう鹿児島実業.その中盤のプレッシングでした。


 実際問題として,球際の強さだけで言えば国見の選手たちの方が上かも知れない。しかし,組織的にボール・ホルダーを囲い込み,強烈な圧力をかけてボールを奪取するという面では鹿児島実業が圧倒的に優位に立っているな,と感じました。その圧力を嫌ってか,前半25分過ぎくらいからは,国見は明らかに中盤での組み立てを省略して最後方,サイドからのロングレンジ・パスを多用するようになっていました。


 私は前後半ともにメインスタンドの最後列(ホームサイド,アウェイサイド両方の)に陣取ってゲームを見ていたのですが,国見が基本的なポジションを崩してまで攻めにかかっている(あるいは,積極的にパス&ムーブを仕掛ける)場面が少なかったのに対し,鹿実は必要とあれば積極的にポジションを崩してまでも局地的な数的優位を保ってボールを奪いに行き,また攻撃にかかっていた,というのが印象に残りました。


 両チームのポジショニング,それは基本戦術に直結するものであるかも知れませんが,そのポジショニングに対する考え方を見ても,鹿実の決勝進出は妥当なもの,と言えるかも知れません。