マリノスタウンとPSV。

来年は十二支で言うと酉年ですね。


 そういえば,干支で表現すればJリーグも一回りを超えるわけです。で,クラブの姿も結構多様化してくれそうな感じ,ありますね。

 それを機に,ちょっとリーグにまつわる話をもとに,私がクラブの姿などについて思っていることを(シリーズ化,ってわけでもないけれど)書いていこうかな,と思っています。


 ・・・失礼しました!早速本題に入ってしまいました。たびたび,のErnestです。


 では,私の思っていること,第1回目。


 マリノスタウン構想−クラブ機能のみなとみらい地区(MM地区)への移転が発表された横浜Mをもとに話を進めたいと思います。


 まず,都市型の練習場というのはマリノスらしいな,と思うし,獅子ケ谷時代をちょっと知っている人間(とは言え,練習見学まではしていない。)としては,練習環境が飛躍的に良くなるであろうことは正直,ビックリでもあります。東横線京浜東北線,あるいは京急線をつなぐバス通りの坂の途中。やはり日産のディーラーがあるその裏側に,ちょっと場違いとも思えるようなピッチがある。ホントのところを知る立場にはなかったけれど,プロフェッショナルの練習環境としては,ちょっと違和感を持つほどに小さかったということだけは強烈に印象に残っています。


 とは言え,MM21地区に日産自動車の本社機能が移転してこなければ,この話もなかったのではないか?とも正直思ったりします。横浜国際のネーミング・ライツを日産が獲得したことも含め,日産が横浜との結びつきを強め,プレゼンスを強化するべく基本戦略を描いていることは明らかなわけで。


 ここまで書いてくると,「コヤツ,横浜と日産の関係を否定的に考えてやがるな?」と思われそうですが,さにあらず!日産との関係が深いことが悪いことだとは「全然」思わないのです。


 厳しい現実論から始めれば。


 横浜国際総合競技場(来季からは日産スタジアム)のシート・キャパシティを大きく超えるだけのシーズン・チケットホルダーを横浜は獲得できているでしょうか。


 すでに平均観客動員数は三ツ沢のキャパシティを超えてはいるけど,スポンサーや親会社に対するパワー・バランスを抜本的に見直せるだけの動員数はないと言わざるを得ない。現状,関東エリアのスタジアムであればどこでも「ホーム・スタジアム」にできるだけの動員力を誇る浦和や,アウェイ動員を「バス何台」で計算できる新潟のようなチームが相手でもない限り,横浜国際をそれらしい雰囲気にすることは難しいはずです。はっきり言えば,安定した観客収入を背景にできなければ,親会社との関係を抜本的に見直すことは不可能でしょう。長くバルセロナが胸にスポンサー・ネームを入れないでいられたのは,カンプ・ノウのキャパシティを大きく超えるだけのソシオ・アボナードが十分にスポンサーに宣伝効果をもたらしていたことが大きな理由と言われているし,観客収入のパーセンテージが,スポンサー・マネーがクラブ運営コストに占める割合に近かった,というのもあるのだと思います。そのバルサでさえ,最近はスポンサー・ネームを入れるべきかどうかが議論対象になってきています。


 対して,Jリーグはまだ固定層の拡大に苦労しているクラブを多く抱えているのが現状です。であるならば,無理に親会社との関係を本当に見直す必要があるのか?というのが今回の論の骨子です。


 そういう部分で参考になるのは,実はエールディビジのPSVアイントホーフェンではないか,とワタシは思っています。端的に言ってしまえば,このクラブは「地域社会に対して積極的に開かれた企業主体のクラブチーム」と形容できるのです。実際,“PSV”は“フィリップス・スポーツクラブ”のオランダ語の略称だそうですから,すでに名が体を表しているのです。


 私たちはクラブ・チームというと,マンチェスター・ユナイテッドのような工場労働者の同好会的なチームからスタートしたクラブをイメージし,特定の親会社との関係を持たないことを無意識的にせよある種の理想としている部分があるかも知れません。


 ですが,日本では長く企業がスポーツをサポートしてきた歴史があります。その歴史を尊重しつつも地域社会を積極的に巻き込んでいくためには,まず企業主体でもいいから,そのクラブが地域自治体,学校社会に対してコミットできる環境整備をしてあげることが重要なのではないでしょうか。そのうえで,社会的な諸条件がそろっているクラブは段階的にせよ,マンチェスター・ユナイテッドのような姿に近付いていくのではないでしょうか。浦和のトップ・パートナー(プリンシパル・スポンサー)が三菱自動車から変わり,背中のスポンサーも変わるというのは(事実ならば)企業ベースのクラブでも同好会を始祖に持つクラブの経営形態に変わり得る,という意味で歴史的な出来事になるかも知れません。


 このことについては,時機を見てエントリを改めたいと思います。