レガシイ、アンベール。

セグメントDよりも,ちょっとだけ小さいセグメントD。


 あるいは,セグメントEよりもちょっと小さなセグメントD。


 北米市場を主戦場とするクルマは概して,セグメントの中間領域を狙っているように思います。たとえば,レクサスGSはセグメントEとして位置付けられるディメンションですが,細かく見ていくと,欧州的なセグメントEとはちょっと違う部分を持っています。同じく,ISにしても欧州的なセグメントDとはちょっとだけ外れる部分を持っています。セグメント,という概念そのものが欧州的なものですから,北米市場を強く意識したクルマですと,セグメントにきっちりと収まらないところがあるのですが,今回発表されたレガシイも,中間領域を狙っているように感じられます。



 今回は,こちらの記事をもとに,シカゴショーで初公開された新型レガシイについて書いていこう,と思います。


 さて。今回は数字の話からはじめたい,と思います。


 L×W×H=4796×1840×1500mm、というのが,今回のレガシイのディメンションであります。このディメンションを,BMWのモデルレンジと比較してみると,今回発表されたレガシイがどのような立ち位置を意識して開発されたか,その一端が見えてくるように思うのです。まず,BMWでセグメントDを受け持つ3erのディメンションを見てみると,L×W×H=4625×1800×1440mmとなっています。また,セグメントEを守備範囲とする5erのディメンションは,L×W×H=4915×1860×1475mmであります。このBMWのディメンションを参考にレガシイのディメンションを見てみると,やはりセグメントDとセグメントEの中間領域,実質的にはセグメントEとしても位置付けることもできるセグメントDを狙っているように感じられるのです。また,この記事をまとめた記者さんによると,先代と比較して全高は5mmだけ抑えられている,とのことです。先代が持っていた居住性を確保しつつ,よりスポーティなスタイルを狙って微調整をしてきた,という感じでしょうか。BMWは視覚的な仕掛けを使って,スポーティなスタイルと実用的な車内高との両立を狙っていますが,今回のレガシイも同じような文脈で理解できるかな,と思います。


 で,いつものようにデザインな話に戻しますと。


 先代は,存在感を外部に対してアピールする,という意味では狙い通りの要素があったか,と思いますが,反面で重々しさを感じさせていた部分も多かったのではないか,と見ています。視覚的な重心が低めの位置に設定されているだろうことは理解できるものの,移動体としての疾走感がなかなかデザインから受け取りにくかった,と言いますか。対して新型は,先行して発表されたWRXなどとの共通性をフロント・セクションなどでしっかりと訴求しつつ,旗艦車種としての存在感を示すことに成功しているのではないか,と思います。サイド・セクションを見ますと,フロントフェンダー上部からリア・コンビネーションランプにかけて配されたエッジと,フロントフェンダー下部からリアフェンダー下部にかけてのエッジを組み合わせることで,ウェッジシェイプを意識付けるような仕掛けをしているように感じられます。視覚的な重心,という意味ではこの新型も決して高い位置に設定されてはいませんが,このアクセント・ラインによってスポーティな雰囲気,疾走感を表現することに成功しているように感じられます。


 最後に,搭載されるエンジンを見てみると,2500cc・水平対向4気筒と3600cc・水平対向6気筒が用意される,とのことです。富士重工としてはひさびさに,フラット6をカタログに登載することになります。軽自動車の開発,製造から撤退すると同時に経営資源をセグメントC(実際にはセグメントD)とセグメントD(先に触れたように,実質的にはEに踏み込んでいると思いますが。)に集中する,という方向性を打ち出した時点で,エンジンにもプレミアム性を訴求してくるだろう,と見ていましたが,いよいよフラット6の再導入,であります。ならば,個人的には欧州市場へのアピールとしても,そしてハイブリッドとは違う方向からの環境対応のアピールとして,ディーゼルなフラット6も狙ってほしい,と思っております。販売規模が小さなマツダは,敢えて多様な選択肢を顧客に対して用意する,という姿勢を見せてくれています。同じような姿勢を,ぜひとも富士重工にも見せてほしい,と思っています。