“テスト”マッチなブルガリア戦(KCC2013)。

完成度であったり,成熟度をチェックする試合ではありませんでしたね。


 むしろ,可能性を試すという方向でのテスト(何度目かの,実戦を通じてのチャレンジ)だったように思います。ブルガリア戦であります。


 さて。今回の対戦相手は絶好,斜め上くらいに絶好の相手だったかも知れません。フィジカルの強さも持っているし,かといって,個を前面に押し出す戦い方を指向するのではなくて,組織的な戦い方を狙っているようでした。であれば,恐らく日本代表がどのような戦い方をしてくるか,誰がどのようなプレー・スタイルを持っているか,一定程度以上のスカウティングをしていたかも知れません。


 この相手に対して,どのような戦い方をするか。


 そのときに,4を使って,4の完成度を見るという段階は恐らく過ぎている,と言っていいでしょう。前任である岡田さんから使っているパッケージですし,距離感や視界など,スムーズに連携を引き出す基盤は整っている,と見るべきかな,と思うのです。テスト,4をベースにしてテストをするというのであれば,新たに招集したフットボーラーが,4のなかでどう個性を見せられるか,という方法論もあるでしょうが,アルベルトさんはどうも,こういうテストは好みではないようです。主力選手に対する信頼感,でもあるでしょうが,なかなかパッケージをつくるフットボーラーを変えてテストを,というやり方をしない。
 

 むしろ,戦術的な部分でチームに刺激を与えよう,という意識が働いているのかな,と思います。3と4では,距離感や視界に変化が出てきます。この変化に対してしっかりと対応できるかどうか,たとえばゲーム・インテリジェンスであったりコンビネーション面で負荷を掛けて,どんなトラブルが実際に見えてくるか,意図的に負荷を掛けて実際にチェックしていたのではないかな,と思うのです。


 そう見ると,思うほどには悪くない,と言うべきかも知れない,と思います。スムーズに連携が引き出されている,であるとか,視界が共有されている,という段階ではないな,とは思うのですが,トレーニングから実戦へのリズムが確立されているクラブ・チームとは違って,なかなか戦術的な変化は与えにくい,という留保はあるかな,と思います。この留保を念頭に見れば,数回目かのチャレンジ,それも3をクラブで動かしているわけではない選手たちで構成されるチームでのチャレンジにしては,一定程度の視界は確保できていたかな,と思います。


 とは言いながら,まだまだ思考にスムーズさが不足しているのは確かでしょう。視界の違い,距離感の違いに対応してパスレンジ,パスの強度を微調整するという部分で,まだまだ「考えている」印象があります。3から4にギアチェンジしたときも,この「考える」部分が残ってしまったように感じます。この時間を削るのは,クラブ・チームのようにはいかないだろうな,と思います。イビツァさん時代のように,3を基盤とするクラブからフレームを持ち込まないことには,なかなか3の熟成は進まないだろう,と思うのです。


 恐らく,ラグビー的な意味でのテストマッチ,「真剣勝負」では4を使うでしょう。この4を基準に考えるのなら,このテストは違った方法論もあった,かも知れない。けれど,アルベルトさんは3という刺激を持ち込み,あえて真剣勝負の前に負荷を掛けた。この負荷が刺激になって,真剣勝負にポジティブな流れとなれば,遠回りに見えるテストにも意味がある,と言えるのではないでしょうか。