青山選手についてのリリースから思うこと。

めぐり合わせなのかな,と思うと同時に。


 「3年目の壁」という言葉を思い出します。


 浦和にとっても,この壁は問題ですし,この壁を回避するためにはローンという選択は避けて通れない。下部組織から昇格してきたフットボーラーが,そのままファースト・チームで存在感を見せてくれれば,それが理想的であるのは言うまでもないけれど,理想ばかりがあるとは限りません。そのときに,フットボーラーとしての能力を錆び付かせることなく,実戦の舞台で能力を高めていく,という選択肢は残しておかないといけない。


 サテライトが動いていた時期とは違う。ファースト・チームは,フットボーラーが持っている潜在能力を引き出す環境からは大きく離れている。このことを意識しておかないといけないな,と思うわけです。今回は,青山選手についてのリリースをもとに書いていこう,と思います。


 さて。青山選手が下部組織であるグランパスU18からファースト・チームへと昇格したのは,2006シーズンのことです。記憶が確かならば,まだサテライトは機能していた時期にあたります。公式戦での出場記録を見る限り,2ゲームだけに出場していることが読み取れますから,恐らくサテライトなどが主戦場だったのかな,と感じます。この状態は,2008シーズンにまで継続しています。いわゆる,3年目の壁を青山選手も経験していたわけです。


 下部組織からの昇格ですから,プロフェッショナルとして必要な資質をすでに2種チームの段階で備えていただろうことは言うまでもないこと,でしょう。プロフェッショナルとして勝負ができる,その潜在能力を持ったフットボーラーである,と。


 潜在能力を持っている,と評価したフットボーラーを,「3年目の壁」に直面させないために何をすべきなのか。


 浦和で下部組織からファースト・チームへと昇格してきたフットボーラーで見るならば,峻希選手は昨季,千葉へのローン(このローンが今季にあっても継続されるのか,それとも今季は浦和に復帰なのか,公式なアナウンスメントがないので何とも気になりますが。)という形ですし,今季浦和に復帰した永田選手は2011シーズンから2012シーズン終了まで,草津へのローンでした。今季にあっては濱田選手が新潟へのローンとなっています。


 浦和を,プロフェッショナルの玄関口としてくれたフットボーラーが,ローンという形ではあるにせよ,早い段階でほかのクラブのキットに袖を通すことには心中複雑な部分があるのは確かですし,下部組織からファースト・チームへと上がってきたフットボーラーならばなおさらに,心中複雑な部分があるように思います。けれど,フットボーラーとして「実戦環境」は自身の能力を引き上げるためにも大事な要素だと思いますし,実戦機会を求めるのは自然なこと,でもあるように思います。また,ファースト・チームに「育成」という要素は(サテライトが動いていない現状においてはなおさらに)求めるのが難しいものがあるように思います。それだけに,クラブが有望な戦力を育てるためにローンを「戦略的に」使う必要性も高まっていくものと思います。


 可能性を感じるフットボーラーが,可能性のままに終わることがないように。


 結果的に,ローンが完全移籍になってしまうかも知れないけれど,めぐり合わせが悪いまま,可能性を引き出してあげられないままに時間が経過してしまうよりもいい,と思うところがあります。プレイヤーズ・ファーストであると同時に,クラブにとっても意味がある形にローンを使っていくことも,より重要になっていくように思うところです。