考えさせること(堀さんのこと)。

ユースを預かっていたときの堀さんを,ちょっと思い出してみるに。


 意外なほどに「動かなかった」という印象を持っています。


 最も印象に残っているのは,保土ヶ谷公園でのゲームです。


 そのときの保土ヶ谷公園は強風に見舞われていて,当然ながらエンドの取り方,前半に風上を取るのか,それとも後半になってから風上を取るのか,戦い方が違ってくるはずですし,ユースは積極的にボールを動かすフットボールを狙っているわけですが,そのパスの繰り出し方にも微調整が求められる,そんなコンディションでした。この試合「だけ」を意識するのであれば,恐らく違う形になったかな,とは思うのです。テクニカル・エリアへと大きく踏み出してコーチングを,であったり,もっと戦術的なメッセージを明確にしながら戦術交代を仕掛ける形があったかな,と思うのです。実際,風を巧みに味方につけた戦い方ができている,という印象は残念ながら薄かった。でも,堀さんは「敢えて」動こうとはしなかった,ように少なくともアウトサイドからは映ります。


 なぜだろうか,と思って,ある要素を当てはめてみました。


 タイトルに掲げた言葉でもありますが,「考える」という要素を当てはめると,「動かない」ことの説明がつくように思うのです。コーチング・スタッフが積極的に動いて,戦術的な枠組み,約束事を明確に示していく,というのもひとつの方法論だとは思うのです。しかし,勝負を最優先項目とすることでフットボーラーとしての「考える」チカラをのばす,そのきっかけを摘み取ってしまう,そのリスクをどこかに意識しているのではないかな,と感じたわけです。結果を引き寄せる,という意味では厳しい状態に追い込まれることになるとしても,敢えてフットボーラーに考えることを求めているのではないかな,と。


 自分たちのフットボールを,どのような形で微調整すればいいのか。風上に立っている相手は,どう考えてゲームを組み立ててくるか,その組み立て方に対して自分たちはどのような形で相手の攻撃を抑え,反撃へのきっかけをつかむか。フットボーラーひとりひとりのアイディアが,チームとしてのアイディアとして動き出すこと,を求めてきたのかな,と思うのです。


 堀さんは,トップチームのコーチに,などという話もあります。なるほど,と思うと同時に,天野さんを含めて,再びアカデミーを担当してくれるといい,という思いがあったりします。そしてもうひとつ付け加えるのであれば,ユースという時間枠ではポテンシャルをしっかりと引き出しきれなかったフットボーラーを,大学,という時間枠のなかでさらに磨いてもらう,そのための大学チームとの連携体制を,アカデミーセンターだけでなく強化部門を含めて築いてほしい(サテライトが廃止されているだけに,実戦環境という側面から見れば,大学チームはこれまで以上に重要な位置付けになるはずですから,大学チームとの関係性強化はそのまま,戦力面に直結するはずです。),と思ったりするのです。