ラリーなカラーリングのサンバー。

もったいないな,と思いますね。


 トヨタとの資本提携が締結された時点で,ある程度予想できた事態であるとしても,です。


 水平対向エンジンが,スバルの代名詞であるとするならば,もうひとつの代名詞は軽自動車に採用されているRRレイアウトである,と個人的には思っています。トヨタダイハツとの関係性を思えば,軽自動車開発を維持することのメリットよりも,経営資源をセグメントD,あるいはプレミアムD方向へと集中させられるメリットを選択するのは理解できるのですが,やはりもったいない。



 webCGさんのニュース記事をもとに,特別仕様が用意されたスバル・サンバーについてちょっと書いておこう,と思います。


 さて。ちょっと歴史を紐解くところからはじめてみます。


 その出発点は,スバル360であります。この360,どこにエンジンを搭載していたでしょうか。フォルクスワーゲン・ビートルであったりフィアット500と同じ,リア・セクションにエンジンを搭載していたのです。ちょっと見ると,フォルクスワーゲン的なフォルムかな,と感じますが,スペース・ユーティリティを最大限に意識した結果,最終的にビートル的な印象になった,というディテールを持っているように感じます。そして,スバル360が販売開始となるのは1958年のことで,ここから3年遅れてサンバーはリリースされます。このときから,サンバーはリアエンジン・レイアウトを維持し続けているのです。


 RRレイアウトを採用した,その大きな動機は恐らくスペース・ユーティリティでしょう。いまの軽自動車規格とは違って,当時の軽自動車規格はかなり小さいものです。その物理的な制約の枠内で,しっかりとした居住性であったり,積載性を確保するために導かれたのが,RRレイアウトという結論だったのだろう,と思います。同時に,駆動力を安定して路面に伝える,というメリットもあった。


 使用条件を思えば,商用車はやはり厳しい条件下にある,と思います。高い積載性が求められるのは当然で,その状態でしっかりとした安定性があることが求められるでしょうし,逆に空荷であることもあり得ます。そのときに,駆動力が抜けたり,操縦安定性が激変するようでも困ります。そこで,後車軸近くにエンジンという重量物を配置するレイアウトに優位性がある,とスバルは考えたのでしょう。ポルシェが911を開発するにあたって,重要視したとされる要素ですね。


 そんなサンバーに,特別仕様が用意された,というわけです。


 この用意された塗色,インプレッサがWRCに参戦しはじめたときのカラーリング,あのベースとなっていた色(つまり,とあるタバコのパッケージに採用されていた色,でもありますが。)であり,のちにスバルのWRCマシンを代表することになった色であります。この塗色に合わせるように,ディテールをちょっとスポーティに仕上げる。そして,インテリアも色調を押さえてスポーティな雰囲気に合わせていく,と。なかなか,シャレが効いていて面白いスペシャル・モデルではないか,と思います。


 ただ,同時に思うのは,こういう特別仕様が用意されるとなると,生産終了というアナウンスメントも時間の問題になってきているのだな,ということです。ボクサー・エンジンという代名詞が失われているわけではないとしても,360以来のRRな軽,スバルらしい軽が失われるのは確かなことで,それはやはりもったいないことだ,と思ってしまうのです。