距離感と機動性。

4−3−3ではなくて,4−4−2を持ち出した理由。


 その理由は,「距離感」という言葉で説明されていたように思います。


 トップとの距離感であり,中盤との距離感であり。確かに,静的なパッケージを眺める限りにおいては,距離感が修正されるような印象を持ちます。持つのですが,では試合中にどれだけこの静的なパッケージが維持できるだろうか,と。ボール・コントロールを失った位置から,相手ボール・ホルダーへのプレッシャーを掛けていくためにイニシャル・ポジションから外れる局面もありますし,ボール奪取を狙ってチームがどちらかのサイドに寄せていく時間帯,というのも出てきます。時間帯によっては,イニシャルで描ける距離とは違う距離になる。当然のことです。


 そのときに,距離を最適化するための要素は何なのか。


 「機動性」という要素ではなかったかな,と。


 中盤が攻撃を組み立てるための距離感があって,トップがフィニッシュへと持ち込むための距離感があって。その距離感,の感覚をユニットとして詰めていく,重ね合わせていくための要素が「機動性」でしょう。ごく大ざっぱに言ってしまえば,「走ること」ですが,ボールを受けて,さらにパスを繰り出し,という流れの中でどの位置でボールを受けるのが理想的か,という「意図」がしっかりと背景にあるフリーランが求められる,とも言えるはずです。


 パスを引き出すために,スペースを狙ってフリーランを仕掛ける。そんな瞬間が重なり合って,ひとつのシークエンスになっていくような形が,今季どれだけあったかな,と。確か,原口選手はU−22でのフットボールを,かつてユースでやっていたフットボールに似ている,というようなコメントを残していたか,と思います。思えば,あのときのチームも「走って」いました。当然,誰もがただひたすら走る,というのではなくて,「意図」を重ね合わせながら走ることができていた。


 今季は,「機動性」を感じる時間帯がいささか少ない。


 必要以上に機動性を引き上げて,フィジカルという部分から破綻してしまうというのも問題だけれど(昨季,リズムという言葉を持ち出した,その背景です。),今季はリズムという話をする以前の問題として,機動性が上がっていない。単純な,そして基礎的な要素かも知れませんが,「走る」,それも相手への守備応対で「走らされる」のではなくて,自分たちの「意図」をもって走る,という部分へと戻らないといけないのではないか,と思うのです。