プジョー908、アンベール。

プジョーが仕立てるスポーツ・プロトタイプだな,と。


 ちょっと歴史を振り返ってみると,グループCにフォーミュラ的なデザイン手法を持ち込んだメイクス,そのひとつがプジョーだったな,と思います。グループCで戦われるレースが,耐久色を強くするものから,スプリント性能を強く求めるものへとシフトすると,スプリントに最適化されたデザインを持ち込む,という判断をしてくる。その当時のデザインをどこかに残しているようにも感じるのです。


 さて。今回はオートスポーツさんのニュース記事をもとに,プジョーが仕立てたスポーツ・プロトタイプについて書いていこう,と思います。


 


 プジョー・スポールはアウディスポルトと並んで,サルテにレーシング・ディーゼルを持ち込んでいるメイクス,であります。アウディはR8からR15まではオープントップなプロトタイプでありましたが,プジョーは最初からクローズドボディのプロトタイプを持ち込んでいました。個人的には,プジョーの判断は空力性能面を根拠にするものではないかな,と思っていたのでありますが,どうもプジョーの主張を見るとそれだけではなくて,ドライヴァの安全性を確保する,という目的もあるのだとか。


 さて。デザイン面を見てみますに。


 やはり,技術規則で要求されるシャークフィン(と言いますか,垂直尾翼と言いますか。)が印象的ですが,マシンのまとめ方はこれまでプジョーが仕立ててきたスポーツ・プロトタイプ,その流れにあるな,と感じます。個人的に共通性を感じるのは,コクピット・デザインです。グループC時代から,プジョーコクピットをかなり小さく仕立てていました。確か,グループCの技術規則では2名乗車を可能にするレイアウトを採用すること,となっていましたが,実際に2名が乗車できるスペースを確保すること,との記述まではなかったはずです。その技術規則をよく読み込んでいたのでしょう,プジョーは空力面を強く意識して小さなコクピットを仕立ててきました。そのために,ガルウィング・ドアもヒンジを持たず,脱着式になっていたような記憶があります。そんなデザインとの共通性があるな,と思うのです。


 逆に印象が変わったな,と思うのは,思うよりもエッジを感じる部分があること,でしょうか。


 ノーズからコクピットへと流れるラインにもエッジを感じるようなフィニッシュが採用されていますし,フロント・セクションからエア・インレットを見たときのデザインも,エッジを感じさせるものになっています。これらのデザイン処理は,現代的なスポーツ・プロトタイプを感じさせる要素かな,と思うところです。


 次に,エンジンでありますが。


 いわゆる自然吸気からターボ過給へ変化していますし,エンジンもV12の大排気量ディーゼルから,V8へとダウンサイジングされています。物理的に軽量なエンジンとなっているはずですから,コーナリング性能などにもポジティブな影響があるものと想像します。ただ,重量配分が大きく変わることになりますし,トルク特性も大きく変化してくるはずですから,ディーゼルの肝である(と思っている)ギアボックスがどこまで熟成できるか,がサルテ,あるいはILMCでの成績にかかわってくるのかな,と感じます。


 この908,初戦は3月のセブリング12時間になるはずです。かつてはIMSA−GTPマシンなど,アメリカンなレーシング・マシンで戦われた耐久レースでありますが,ここにはアウディもR15プラス・プラス,そしてクローズドへと変更を受けたR18が乗り込んでくるはずです。ル・マンの前哨戦としても,両ファクトリーがどのような戦いぶりをみせてくれるのか,楽しみであります。