細貝選手移籍に思うこと。

恐らく,相当な波風を立てることになるだろうけれど。


 それでも,クラブが“プロフェッショナル”として動くべき時期なのだな,と感じます。


 敢えて厳しいことを書きますが,ひとりひとりのフットボーラーは,大事な戦力構成要素であると同時に,重要な「資産」でもあります。その資産が,クラブに対して何の利益をももたらさない形で流出する可能性が,現実に変わる。すでに,ほかのクラブではこの現実を突き付けられています。そのときに,単純な防衛策だけで足りるでしょうか。もっと「積極的に」クラブが動く可能性もある,と見せる必要性もあるのではないかな,と思うのです。国内では違う立場だと思うけれど,それでも国際的に見ればあくまでも「取られる」立場であることは揺り動かしようがありません。フットボール・ネイションにあっても,残念ながら「取られる」クラブと「取る」クラブは明確に分かれるし,「取る」クラブであっても危機管理の姿勢は徹底しています。ならば,現実的な利益を意識した行動,たとえば,複数年契約延長を拒否するフットボーラーに対して,クラブ主導で海外移籍を模索するという,ユナイテッドなども持ち出す手法が必要になるのではないか,と。


 もちろん,フットボーラーとしてのキャリアは決して長いものではありませんし,細貝選手にとって納得できるキャリア・デザインを,と思いますが,反面で今回の話はクラブの無防備さを感じてしまうのです。それゆえ,厳しめのマクラを書いてみたわけです。
 相変わらず,スポーツ・メディアに先行される浦和からのニュース・リリースをもとに,細貝選手の移籍について書いていこう,と思います。


 個人的には,「書きかけ」感が強いな,と思います。


 リリースを見ても,確かにタイトル奪取時期と重なったキャリアではあります。ありますが,何か物足りない感じがします。やはり,リーグ戦での存在感とファースト・チームのポジションがうまくリンクしていないからかも知れませんが,スターターとしてのポジションを奪取した時期と,チームがポジションを落としていった時期が重なってしまっています。少なくとも,タイトル奪取に向けての勝負権を感じさせるような形のチームで,スターターとしての存在感を放っていれば,ともすれば書きかけ感は薄れるのかも知れないけれど,どうも書きかけ感が残る。まだ,これからのフットボーラーであるように感じるわけです。
 ボール奪取のスタイルは,確かにファイター・タイプであることを感じさせるところだし,ギドがディフェンスへのコンバートを考えたとしても不思議はないな,と思わせるものがありました。また,ボール奪取から積極的に攻撃を仕掛けていくという姿勢は,浦和の中盤を支える要素でもあった。気迫を前面に見せるそのスタイルゆえに,どこか荒削りな雰囲気を残すプレー・スタイルではあったけれど,それだけにどんな将来像を描くのだろうか,と思っていたのも確かです。浦和,というチャプターで,まだ何かを書いてほしかった,という思いかも知れません。ただ,先に書いたようにフットボーラーのキャリアは決して長くないことも確かですし,彼の判断は尊重すべきだろうと思っています。


 さて。細貝選手が移籍するクラブは,バイヤー・レバークーゼン。クラブ創設が1904年(つまりは,内田選手が在籍するシャルケ04と創設年次は同じであります。)と古く,古豪と表現して差し支えないクラブであります。でありますが,タイトル獲得数を考えると,意外なほどに少ない。要は,“Runner-up”であったことがいささか多過ぎるわけです。ちょっと失礼な言い方になりますが,かつての三洋電機(東京三洋電機ラグビー部と同じく,誰かのタイトル奪取であったりを結果としてアシストしてしまっているような印象が強いクラブでもあります。
 そんなクラブでありますが,ここ数季は再びマイスターシャーレへの勝負権を意識した動きを見せていますし,今季はマイスターシャーレへの勝負権を持った状態で年を跨ぐことになります。であれば,スターターに割って入る,というのはそう簡単なことではないかも知れません。スポーツ・メディアでは移籍加入後,2部を戦うクラブへのローンが想定されているとかいないとか。もちろん,ローンが想定されるクラブ(アウクスブルク)も,トップフライトを意識できるポジションに付けていますから,全体として悪くない選択だろう,とは思います。


 ただ,やはりクラブの姿勢が気になるところです。海外志向が強いフットボーラーの意思と,重要なアセットを手放すことになるクラブが確保すべきメリットと。プレイヤーズファーストであることと,クラブがメリットを確保することとは,必ずしも矛盾する関係ではないと思いますし,ある部分ではフットボール・ビジネスとして厳しい部分も意識してほしい,と思うのです。