対G大阪戦(10−31)。

相手が展開するフットボールが,「らしからぬ」ものに映る。


 そういう状態に持ち込む時間帯もあったのだから,全面的に悪かったというのはフェアではないように感じます。感じますが,相手をらしくないフットボールへと追い込みながら,決定的な形からフィニッシュへ,という局面で形を作れない。「決定力」という言葉で説明することもできるかな,とは思いますが,反面で縦方向にギャップをつくる2トップ,あるいは左右アウトサイドにウィンガーを置く1トップ,という戦術パッケージを使っている意図を,ピッチで表現し切れているようには感じられない,という部分にもったいなさを感じます。


 まいどの通り,のG大阪戦であります。


 リズムを掌握している時間帯に,先制点奪取,というフィニッシュへ持ち込めないと,いつかその掌握しきれなかったリズムは相手に傾く。緊張感に支配された均衡,という形で45:00を経過したわけですが,その「均衡した時間帯」に相手の展開したフットボールは,彼らが指向してきたフットボールとは違う色彩を持っていたように思います。その,違う色彩を持ったフットボールを打ち破る,もう一段階が足りなかった,表現されなかったように感じます。


 まず,守備応対面から考えるならば,チーム全体が連動して上下動をしていく,という形を表現できていない時間帯が,後半にかなり多かったように感じます。


 前半の段階では,バックライン背後のスペースを狙われる,というリスクを潰し切れなかった局面はあるものの,チームはある程度のコンパクトネスを維持できていたように感じます。ブロックが上下動を繰り返しながら攻撃を仕掛け,守備応対をかけるという意識が維持できていた,と。
 問題は,シンプルにバックライン背後を突かれ,先制点を奪取されてからの時間帯です。
 チーム・バランスに不安定性を感じさせる時間帯が出てきます。ある程度,チームがユニットとして上下動を繰り返すことができていた時間帯から,そのユニットが不用意に間延びしていく時間帯が出てくる。攻撃面へ意識が傾くのは仕方ないこと,ではあるでしょうが,ボール・コントロールを失った直後の守備対応が中途半端に終わる局面が増えてきます。ポジションが高いままで,しかもファースト・ディフェンスの強度が前半と比較すると緩くなっている。単純な間延びではないから,守備応対が前半段階と比較して難しくなっていたように感じます。
 最終ラインがライン・コントロールを修正するとしても,ディレイが掛かる形でラインを高くしているから,相手がボール・コントロールを奪取,シンプルに攻撃を仕掛けてくるタイミングと,守備ブロックが最終ラインをコントロールするタイミングとがずれてしまう局面が出てくる。また,ボール・ホルダーへのファースト・ディフェンスが緩さを見せるようになっているから,どうしても自分たちの形で守備応対ができる時間帯が少なくなる。相手の動きに守備ブロックが引っ張られる時間帯が出てくるわけです。前半段階ではポジショニング・バランスを意識しながら網をかけ,相手の動きにまともに付いて行って結果として守備ブロックに大きなクラックを生じてしまう,という形に嵌り込まないような守備応対を意識できていたように映るけれど,チーム・バランスが不安定さを見せるようになることで,守備応対面でも不安定さを見せるようになった,と感じます。
 流れの中からの失点は,後半開始直後の時間だけに結果として抑え込めてはいる。いるけれど,実際には相手が狙うゲーム・プランに嵌り込んだ状態から抜け出せなかった。今節を決定付ける,ひとつの要因がバランスの不安定さにあったように,感じます。


 もうひとつの要因は,攻撃面にあると感じます。


 ごく大ざっぱに言えば,ネガティブなポジション・フットボールになる,そんな時間帯が攻撃をギアチェンジするべき時間帯で見えてしまう,ということになるでしょうか。


 好意的に解釈するならば,ひとりひとりのフットボーラーがある程度の局面打開力を持っているから,となるかも知れませんが,ボール・ホルダーへのサポートが薄い時間帯が、前半段階でも多いのが気になります。そして,ボール・ホルダーを追い越すようなフリーランを仕掛けていく局面があまりに少ない。
 パスで「縦」を狙う,という意識が強いのは,決してネガティブな話ではありませんが,それだけではなく,フリーランで縦を狙う,という姿勢がパス出たてを狙う,という形と連動していかないと,結果的にボールの収まりどころを相手守備ブロックに特定させることになるし,守備応対をシンプルなものにしてしまうように感じます。
 前半,相手は「敢えて」ブロックを低めに構えているように感じました。ミッドフィールドでボール奪取勝負を真正面から,というよりも,CBがポジショニング・バランスを失わないように意識して守備応対を繰り返す,という方向性に感じられました。浦和が1トップ,と言いますか,縦のギャップを持った2トップで,そのトップを積極的に追い越していくような仕掛けが多くない,と見切っていたようなゲーム・プランに感じられたのです。そして実際に,相手が描いてきただろうゲーム・プランを打ち破ることができなかった。それだけに,「リズムをつかんだ時間帯」,相手守備ブロックに小さなクラックをつくることのできた時間帯に、ゴールという結果を引き寄せられなかったことがもったいない,と思うわけです。


 引き寄せきれなかったリズムは,やはり相手へと傾くことになる。


 ハーフタイムを挟んでからの45:00で,「縦」を急ぎ過ぎている印象が強いし,縦にシンプルに,という意図があるとしても,縦にパスを打ち込んだあとのアイディアが表現されない時間帯が積み上がってしまう。結果として,相手守備ブロックが「守りやすい」、単調な攻撃へと嵌り込んでいってしまったように感じます。
 ごく大ざっぱな書き方をすれば,「活かし活かされる」のバランスがかなり悪い,ということになるだろう,と思います。パスを繰り出し,相手を活かす。その先がなかなか連動していかないから,相手守備ブロックをしっかりと揺さぶってからフィニッシュへ持ち込む,という形に持ち込みづらい。縦への推進力が,ひとりひとりのフットボーラーで分割されているような印象になっていて,ユニットとして縦への意識が連動していくケースが少ない。センターでボール・ホルダーが孤立するケースも,そしてアウトサイドでボール・ホルダーが孤立する局面も多く見えています。ボールを預けるまではいいとして,今度はパスを繰り出すべき位置を,ボール・ホルダーが「考える」形に陥ってしまっている。フリーランを仕掛け,ボールを引き出す位置を狙うための時間を作る,「溜め」のタイミングを越えてボールをホールドしていないとパス・コースが見えてこない。これでは,ポゼッション・ベースの攻撃を仕掛けるとしても,リズムがギクシャクすることになりかねない。


 局面打開力を持った個がいる。大きなアドバンテージだとは思います。思いますが,それだけで組織的な守備ブロックを崩すには,やはり何かが足りないと感じます。もっと,ひとりひとりの局面打開力を,スムーズにつないでいく意識が必要になるし,そのための「小さなフリーラン」が欠かせないように見える。トップの高い能力に最終的な部分を委ねる,というフットボールではすでにないのだから,ユニットとして「高いパフォーマンス」を表現しなくてはいけない。
 トップを積極的に追い越していく、飛び出す勇気であったり,ファースト・タッチでの正確性,ファースト・コントロールからゴールを狙う積極性など,ディテールをもっと突き詰めていくことが求められているように感じます。


 狙うフットボール,というフレームが悪いとは思わない。フレームに問題を求めるのではなくて,フレームのポテンシャルを存分に引き出すための要素、しかもディテールに関わる部分が足りない。そんな印象を持っています。