セッティングを煮詰めるために。

ちょっと,屋号な表現をすれば。


 戦術的な約束事は,あくまでも基本的なセッティングでしかない,と感じます。ファースト・チームというレーシング・マシンが,どのような特性を持っているのか,理解をさせる程度には煮詰まっている,としても。それでは,レーシングな世界では足りません。転戦するサーキットに対応して,セッティングを変更していく必要があるし,操るひとが好むセッティングを見つけ出していく必要があります。そんな状態を「闘える」セッティングと言うならば,そのセッティングへと煮詰めていくために、チーム・クルーとの共同作業が必要になってきます。その作業,浦和というレーシング・マシンで機能しているかな,と。


 水曜日のエル・ゴラッソ紙には,原口選手のインタビュー記事(記事をまとめたのは,MDPにも寄稿している古屋さんであります。)が掲載されています。フォーカスされているのはロンドンではあるのですが,浦和についてのコメントが引き出されてもいます。原口選手は柏木選手について,要求が高いというニュアンスのコメントをしています。大ざっぱに何かを求めるのではなく,どのようにして動いてほしいのか,ディテールに踏み込んで要求するタイプであることが,コメントから感じられます。ヴァレンティーノ・ロッシのようで,なかなかよいな,と思います。


 ふと思うに。


 アウトサイドから浦和のフットボールを観察し,新たにインサイドとなった柏木選手は,早い段階で浦和のベース・セットを理解した,と考えてもよさそうです。そして,「闘える」セッティングへと踏み込むために,何が足らないのか,何を要求すべきかのか,をしっかりと主張している,と。
 であれば,2009シーズン段階から新たなフットボールを動かしているフットボーラーは,もっと明確に主張すべきではないかな,とも感じます。柏木選手がキー・パーソンなのは間違いないけれど,彼だけがセッティングを煮詰めていくわけではないはずです。柏木選手に「使われる」,反対側から見れば柏木選手を「使う」フットボーラーもどのような動き方をしてほしいだとか,パスを欲しいであるとか,具体的に主張していくべきだろう,と。もちろん,その主張は攻撃面に限定されることではなくて,守備応対面にも当てはまること。ボール・ホルダーに対して,ファースト・アプローチはどのように仕掛けてほしい,であるとか,どのエリアまで追い込んで欲しい,とか。


 どうも,「主張している」ひとが少ないのでは?と感じます。


 誰もが,柏木選手のように高い水準で要求していい,と感じます。誰かが,ではなくて,誰もがセットを煮詰めるために欠くことのできないタレントなのだ,と。そんな姿を,日曜日の中野田では見たいな,と思うところです。