フットボールを生かすためのアンチ・フットボールを。

夏場の対策であり,対カウンター対策であり。


 確かに重要な要素ではありますが,これらの要素に対する意識が強くなりすぎているのでしょうか,志向してきているはずのフットボール・スタイル,その強みをも抑え込んでしまってはいないか,と感じます。結果として,もともとのフットボールへの確信までにネガティブな影響が出てきた,ということなのかな,と感じます。


 この時期に,本来狙っているはずの機動性が表現しきれないのは当然のことでしょう。単純に,機動性を引き上げて相手を崩す,という方向性を狙ってしまえば,自分たちから消耗を早めてしまう,というリスクを背負うことにもなりかねません。特に,「連動性」が薄い状態での突破が局面打開での方法論になってしまっている現状では,相手守備ブロックにかかりやすくなっている,というリスクもあります。
 それだけに,どうしてもボールロストからのカウンターを受ける,というリスクを考えておかなければならないのだけれど,カウンターを警戒し過ぎてしまえば,今度は相手が揺さぶってくる前に縦方向にチームが引き延ばされてしまうことにもなりかねません。トップとミッドフィールド,ミッドフィールドと最終ライン,という距離感が本来狙っている距離感ではなくて,ちょっと遠い状態からフットボールを展開しなければならない状態になってしまう。距離を修正する,というワンクッションが出てしまうから,守備応対から攻撃へ,というときの転換が必ずしもスムーズ,というわけにはいかない。


 この時期に,狙うフットボールを機能させるためには,チーム・バランス(ポジショニング・バランスと言い換えてもいいと思います。)が重要だし,機動性を生かすとしても,「時間帯」を絞り込んでいかないと,ということなのだろうと思います。


 カウンターへの意識は確かに重要ではあるのだけれど,そのためにポジショニング・バランスが崩れてしまえば,相手の主導権で試合を動かされてしまうことにもなりかねない。当然,自分たちの主導権で試合を動かしたいわけですから,コンパクトに,ではあっても,「常に」機動性を高めておく必要性はないだろう,と思うのです。


 冷静に,仕掛けるタイミングを狙っていい,と。ちょっと乱暴に言えば,ゲームを壊し気味に狙うくらいでちょうどいいのでは,と思うのです。


 振り返ってみると,相手に焦りを,と言うよりも自分たちが焦れてしまっているような形に嵌り込んでしまっている。どこか,戦い方が正直過ぎるような印象を持っているのです。そうではなくて,徹底して守備的に,スローに動かすアンチ・フットボールな時間帯と,本来の「らしい」フットボールな時間帯との「落差」を明確につくるような戦い方であっていいな,と思うわけです。そして,その時間帯が全体の10%以下であってもいいだろう,と。


 かつてのカウンターを基盤とする戦い方ではないとしても,かつてのように得点を奪いたいタイミングでしっかりと得点を奪取する,いい意味で「嫌らしい」戦い方ができるかどうか,がステップを上がるための鍵かな,と思ったりするのです。