高原選手の水原移籍に思うこと。

クラブとしての,戦力設計がどうなっていたのか。


 振り返ってみれば,そんな疑問が浮かびます。


 今回は,浦和からのリリースをもとにしつつ,徒然に書いていこう,と思います。


 さて。高原選手の持っている能力,と言うか怖さを表現してもらうためには,ボックス近くのエリアでシンプルにフィニッシュに持ち込む,という形をチームとして表現できていなければならないような印象を持っていました。磐田でのイメージであります。支えるユニットがあって,個を生かせる,と言いますか。


 ただ,クラブ・サイドは「個」という側面だけから考えていたような気がします。どのような戦術を取り入れるつもりだから,どのような戦力が必要,というロジックが見えていなかった。


 戦術的な成熟度が高くないと,個を生かそうにも生かし切れない。2008シーズン当時のフットボール・スタイルを考えてみれば,機動力,という側面を持っていないとなかなかフィットしきれない。どう戦術的に合わせればいいのか,そもそも戦術的な約束事がガタガタだったシーズンですから,シンプルにプレーさせようにも難しかった,とも言えるでしょう。
 加えてみれば,同じような個性を持っているフットボーラーを重複して獲得したことのネガティブが出ていた,ように映ります。サポートがあって活かせる個,であるがために,どちらかがサポートに回る必要が出てくるのだけれど,サポートする,されるの関係が構築できなかった。


 2009シーズン以降で考えるならば,ちょっと前のエントリでも書きましたが,視界がすれ違ってしまったような感じがします。


 確か,ブンデスリーガを主戦場としていた時期にあっても,センターとして戦力計算されるのではなくて,ウィンガーとして戦力計算されるケースがあったような記憶があります。戦術的な理解度が決して低いわけではない。むしろ,理解度が高いフットボーラーだろう,と思うのですが,それだけにセンターよりも,ビルドアップ段階で重要な役割を担うポジションで使いたい,という意識が,特にジャーマンな指揮官には共通してあった,ということなのでしょう。ワールドカップを視界に,という時期に,センターとして評価してくれるクラブで戦いたいという意識を持って浦和へと加入したはずなのに,実際にはブンデスリーガ時代と変わらない。


 センターとしての矜持を貫こうとすれば,1つしかないポジションを争うことになるし,決定権を持つフォルカー・フィンケにとってのファースト・チョイスは,高原選手ではなかった,と。


 アウトサイドな印象を書けば,ウィンガーとしての高原選手にも可能性を感じていましたし,2009シーズン以降の浦和が志向するフットボール・スタイルへの理解も深かったように思っています。それだけに,プロフェッショナルとしての矜持が,理解できると同時にもったいない,という思いになってしまうのです。いまの浦和にあって,パフォーマンスを活かせるポジションが皆無,というわけではないだろう,と。


 今回の水原への移籍はローンではなく完全移籍,であるとのこと。シーズン途中での移籍加入でもありますから,実質的なワンウェイであるにしてもローンという形を取るか,とも思っていたのですが,最初から完全移籍加入という形で迎え入れた。水原が,高原選手をどのように評価しているのか,が側面からであるとしても見えてくる話だと思います。


 センターへのこだわりを結果で証明するためにも,センターとしての存在感をどうあっても取り戻してほしい,と思います。