都築選手のローンによせて。

あくまでも,個人的な印象でしかないのですけど。


 印象的な歩き姿だな,と思います。スッと背筋が伸びていて。それほどに腕振りが強いような感じはしないのだけれど,不思議なことに腕の動きにも視線が止まったりする。ピッチへと足を踏み入れる,あるいはピッチから外れるときの,あの歩き姿が,まずは印象的です。


 浦和からのリリースをもとに書いていこう,と思うのですが,正直なところを言えばきれいにまとめて何かを書ける,という感じではありません。いつも以上に支離滅裂,かも知れませんがお付き合いください。


 ルーティンを徹底するフットボーラーなのだな,というのは,ウォーミングアップ・セッションのときから感じられるところです。「トゥルシエ階段」を上がって,ピッチサイドへと向かっていく。ピッチに入る直前,タッチラインを跨ぐときに,細かくステップを切っているように見えるのです。
 ウォーミングアップそのものは,チームとしての流れもありますから,なかなか独自のリズム,という印象はありません。それでも,らしいリズム,というのか,そんなリズムが感じられました。


 ゲームに入っていくときも,ルーティンを明確に感じさせます。クロスバーへの,あの儀式です。


 誰か,フットボールを見守っている「誰か」がいるとして,その誰かと会話を交わしているような,それでいて,自分に何事かを言い聞かせているような。フットボール・ブーツで,その誰かがいる部屋のドアをノックするようでもある。そんな儀式を経て,イニシャル・ポジションに入っていく。
 やはり,ピッチでは鋭く,正確なキックが印象に残ります。それほど大きく助走を取るでもない。むしろ,小さなステップを刻む程度でしかない。決してキック・モーションが大きいとは思わないのですが,独特なフォームからドローボールのように伸びのあるプレース・キックを放っていく。「縦」への鋭さを主戦兵器としてリーグ戦を戦っていたわけですから,当然にこのキックは大きな意味を持っていました。いまのフットボール・スタイルにあっても決して重要度が失われるものではない,と感じているのですが,コンパクトさと反する方向性にチームを振ってしまう,という意識でもあったでしょうか。


 ピッチに立つことを許されるのは,ひとりだけ。


 そういうポジションであるだけに,実力を持った選手が複数クラブにいれば,難しいマネージメントが要求されるだろうことも,理解できるところです。
 また,「将来」を厳しく見つめた話なのかも,と思うところもあります。確かに,現段階だけを見ていれば,強力な戦力構成ですし,この構成を積極的に崩す必要性もない,ように少なくともアウトサイドには映ります。映りますが,将来的にこの構成を崩さざるを得なくなったとき,ファースト・チームが表現できるパフォーマンスが下がってしまえば,現段階での判断が将来に影響を与えることになってしまう。そうならないために,ヤマザキナビスコカップでは若手を積極的に使っていっているのだろう,と。100%フィットではないから,なのだろうか,などといろいろと思いをめぐらせていたのも,確かなことです。


 ともすれば,リターン・チケットではないのかも知れません。知れませんが,個人的には100%フィットの状態を見せ付けてほしい,と思っています。どうしても戻したい,そう思わせるだけのパフォーマンスを発揮してほしい,と思っています。
 ここ数季,「ええカッコ」してもらうことができなかった。ファースト・チームがカップを掲げる栄誉に浴するとき,自分が貢献してきた,という確信を持っているときの姿は,まさしく「ええカッコ」だった,という記憶があります。ピッチで見せる表情とは違った,開放感を感じさせる表情で。
 浦和でもういちど,「ええカッコ」をしてほしいし,見てみたい。個人的には,そんな思いであります。