踏んでいくこと。

時間帯を細かく区切ってみれば。


 必ずしも,悪い時間帯だけがあった,とは思いません。立ち上がりの時間帯は,不安定なボール・ロストも少なく,一定程度のポゼッションができていました。ただ,ミドル・サードの話なのです。


 アタッキング・サードで,相手に対する脅威となるポゼッションではありませんでした。


 相手守備ブロックに対して,どのようにして脅威を与えていくか。そのための「仕掛け」が,このゲームでは欠けていた。直接的に脅威を与えられるエリアに,いい形で侵入ができていませんでした。


 パス・ワークによって,相手守備ブロックに隙を作り出す。その隙を突くのは,縦への鋭さであり速さです。パス・レシーバとの距離感が適切に維持できていなかった,という要素も当然関与しているはずですが,リターンを引き出しながら仕掛けていく,という局面がなかなかつくり出せていなかった。攻撃リズムに,変化を与えることができていなかった,とも言えるでしょうか。


 もうひとつの側面で言うならば。


 “ゲーム・マネージメント”が,不安要素という見方もありました。チームとしての機動性が,戦術的なイメージをどれだけピッチに描き出せるか,を分ける要素であるために,機動性が低下してくる時間帯に,相手に対する隙を見せてしまう。その不安要素を潰すためには,どうしてもリズム・コントロールが必要になってくる,と。
 でありながら,どこか中野田でのゲームは「焦って」いた。仕掛けでいい形に持ち込めない,という意識があってでしょうか,チーム・バランスが崩れる時間帯が出てきてしまっていたように思うのです。対戦相手が,カウンター・アタックを繰り出してきたタイミングと,自分たちが自らリズムを悪くしつつあった時間帯とが重なってしまうことで,先制点を許したように映ります。


 そして,物理的なビハインドが,さらにリズムを悪くする。


 相手を揺さぶり,崩すというイメージが,心理的な要素によって抑え込まれてしまったという印象を受けるのです。そのはじまりは,攻撃が仕掛けにつながらなかったこと,でありましょう。


 当然,高い機動性を90分プラス,という時間帯で維持するのは,新たなフットボール・スタイルへとシフトした初年度にあって,なかなか難しいはずです。となれば,「時間帯限定」になるのは仕方のないこと,でもあるでしょう。攻撃を相手に対する脅威に,という側面ではギアチェンジ,そして加速するためにアクセルを踏んでいくイメージが再び徹底されてほしい。その「仕掛けるためのアクセル」を,誰でも踏むことができる,と言いますか,特定のタレントではなくて,誰しもがアクセルを踏んでいくことを求めているのが,今季のフットボールであるはずです。


 チームで相手を崩し,チームでフィニッシュへの道筋を構築する。その原点に,しっかりと立ち戻っていくことが,結果的にはチームのコンディションを取り戻すことになるはずだ,と感じます。