クラブを貫く“Principle”。
ごく当然のことを言っているに過ぎないのですがね。
その当然のことが,いかにできていなかったか。ここ数季,クラブが「複合的に」問題を抱えていた,ということを意味しているように感じます。
ブリーフィングでのフォルカーさん,そのコメント(オフィシャル)をもとに。
「複合的」。
絡み合ってしまっている,という感じでしょうか。
ファースト・チームに関して言うならば,チーム内での健全な競争状態が維持されていない,ということが要因のひとつだったでしょう。
そして,チームが描いていていいはずの戦術的なイメージが,組織をベースとするものと言うよりも,「個」を基盤とするがために,コンディションの上下動によってパフォーマンスの上下動を招いてしまったこともまた,要因として挙げることができるでしょう。結果として,メンタル・マネージメントに破綻をきたし,メディアを経由する形で不満を表面化させる形になってしまった。
チーム内部で,問題を解決できる状態になかった,という裏返しでしょう。
クラブ・サイドを見てみれば,「内部的なポリティクス」にメディアを利用しよう,という意図を持っているかのような人物がいるように,どうしても感じられます。
この状態は残念ながら,今季においても継続していると感じられます。
過去数季,メディアを通じて浮上してきたクラブの課題はすべて,内部的に解決すべき性質のものであり,このような課題が漏れることで,クラブ,ファースト・チームを貫いているべき原則が大きく揺らいでしまいます。
この点,フォルカーさんのコメントはまったく間違ったものではありません。
ただ,表面的にはメディアさんに向けたメッセージのようでいて,実際にはクラブ,そしてチームに向けたメッセージでもある,と理解すべきだろうと思います。
戦術について語るのは監督だけの仕事です。選手たちがそのことについて話すのは本当はあってはならないことです。ドイツでは、若い選手がプロになってすぐに学ばなければいけないことですが、選手というのは他のチームメートについてネガティブな発言は一切してはいけない、それから公の場で、自分の給料を払っているクラブについてネガティブな発言をしてはいけない。これはサッカー協会だけではなく、通常の企業では当たり前のことだと思います。
というコメントは,クラブが厳守すべき,原理原則だと思います。
この原理原則,残念ながら常に貫かれているとは言えませんでした。フォルカーさんの就任を機に,メディアさんとの関係は交通整理されつつあります。とは言え,クラブ・サイドの意識が変わらないと,そしてチームの意識が変わらないと,この原理原則は疎かにされてしまいます。この点,クラブに関わる全てのひとが肝に銘じておいてほしいものです。
そして当然,メディアさんに対しても「釘を刺して」いるのは間違いないところでしょう。
恐らく,フォルカーさんの主張するところはこういうことではないかな,と。
ちょっと繰り返しにはなりますが,あえて書いてみますと。
イングランドやイタリアと違い,大きな取材源は比較的開かれています。
トレーニング・グラウンドであります。しっかりと足を運んでいれば,そのチームがどのような戦術的意図を持っているのか,見えてくるはずです。ひとりひとりの選手が,どのような役割を持っているのか,も。観察していれば,質問内容も自然に,ディテールに行き着くはずです。
同じことは,マッチデイでも言えることでしょう。
最もわかりやすい例で言うならば,戦術交代でしょうか。フォースが掲げるLEDボード,その背後にあるのは間違いなく,指揮官による戦術的なメッセージであるはずです。
そして,戦術交代によってピッチへと持ち込まれた戦術的なメッセージは,チームにしっかりと浸透したか,それとも中途半端に終わってしまったか。中途半端に終わってしまったとすれば,その要因はどこに求めるべきか。しっかりとピッチを,そしてダッグアウトを観察していれば,相当な質問項目が導けるはずです。ディテールに関して説明を,というわけにはいかないにしても,興味深い回答が返ってくる可能性もあり得る,かも知れません。
つまりは,かつてジェフを率い,そして代表に転じた名指揮官に対するのと同じ,「正攻法」の取材姿勢を待っている,ということなのではないか,と思います。