対FC東京戦(09−02)。

着実に,的確に。


 2009スペックを煮詰めつつあるのは,間違いありません。


 開幕節も,もちろん同じ印象を持ちました。持ちましたが,「客観的な数字」としての足掛かりは得ていません。間違ってはいない,という「感触」は持っただろうけれど,「不安感」と表裏一体の感触だったかも知れません。感触を(一定程度の)確信に変えるには,そして確信レベルを着実に引き上げていくためには,「客観的な数字」が必要でもあろう,と感じます。


 そしてファースト・チームは道標を得ました。ただあくまでも,狙うフットボール・スタイルへのファースト・ステップです。


 実戦を通して出てきた課題を潰し,さらに熟成度を高める。トレーニング・スケジュールから実戦へと続く,しっかりとした循環が始まったことが,「勝ち点3」と並ぶ大きな収穫であるように感じます。


 と,いきなりまとめにかかりましたが。いつものように1日遅れ,のFC東京戦であります。


 まずは,静的なパッケージからはじめます。


 今節のパッケージは4−4−2ボックス,ということになりましょうか。ただ,動的なパッケージングを見てみると,2トップが「横」の距離感を意識した関係ではなくて,むしろ「縦」に近い,ギャップを意識した距離感を保持していたように感じます。そして,前方に構えるセンター・ハーフはポジション・チェンジを強く意識しながら,ギャップをつくって位置しているトップとのコンビネーションを構築,攻撃リズムを作り出す,という形でした。


 ですので,仕掛けをベースに考えると4−5−1(4−2−3−1)的な時間帯が比較的多かったようです。


 このパッケージ,ごく大ざっぱな言い方をするならば,攻撃面では2009スペックとしてのフットボール・スタイルを表現できている,そのパーセンテージが高い(とは言え,「現時点では」という留保文言が付くのは言うまでもありません)のですが,攻撃の端緒でもあるボール奪取,という部分ではまだ戦術的なイメージに,曖昧な要素を残してしまっているように感じます。


 そこで,結果を引き出した試合ではありますが,守備面を見ますと。


 相手ボール・ホルダーに対してアプローチを仕掛けるポイントが,2008シーズン以前の意識に引きずられている時間帯が残っているように思いますし,ボール・サイドでの守備応対に整理されきっていない要素を感じます。たとえば,相手がタッチラインに近い位置でボールを保持しているときに,ファースト・ディフェンダーだけでなく,セカンド・ディフェンスが入って数的優位を構築している局面であっても,なかなかボール奪取を意識したアプローチが仕掛けられず,オープン・サイドにボールを振られてしまえばクリティカルな局面を作ってしまう,という時間帯を生んでいたように感じます。


 さらに,相手がボールをコントロールしている時間帯では,チーム・バランスが自陣方向に傾いていることが多く,最終ラインとの距離感によって相手ボール・ホルダーへプレッシャーを掛けると言うよりは,2008シーズン以前のように,最終ラインに近い位置で仕掛けを抑え込むようなディフェンスになりがちでした。


 ボール奪取位置を,「意図的に」上下動させるのであれば,リズム・コントロールにつながる要素です。ですが,「無意識的に」ボール奪取位置が上下動してしまうとなると,予想外に攻撃を仕掛けるポイントが低くなったり,チームが描くポイントに近い位置で攻撃を仕掛けられたり,とリズムが安定しない。2009スペックをさらに熟成させていくためには,ボール奪取面で不安定性を感じる時間帯をいかに潰せるか,が鍵を握ろうか,と思います。


 対して「勝ち点3」という収穫を得ているのですから,内容面で収穫も多く。


 雨を相当に含んだピッチ・コンディションを差し引かずとも,かなり安定したパス・ワークだったと感じます。相手ディフェンスを引きつけるようにパスを繰り出し,そこから再びボールを引き出す。相手ディフェンスに対して,直接的な脅威とはなりにくいトラバース・パスを繰り出すことによるポゼッションではなく,ギャップと角度を持ったパスが繰り出される時間帯が,着実に多くなっていることを感じ取れました。


 そして,追加点奪取の局面や決勝点を奪った時間帯の攻撃は,浦和が志向し,熟成を図っているフットボール・スタイルが表現されたものだと感じます。


 圧倒的な個を持ったフィニッシャーにいかにボールを預けるか,ではなくて,パス・ワークを基盤として相手守備ブロックにクラックを生み出し,パス・スピードとフリーランを組み合わせることで仕掛けを加速させる。そして,スペースを狙ったパスを繰り出すことで,相手にとってクリティカルなエリアを奪い,フィニッシュへと持ち込む。攻撃の組み立てには特定のユニットだけが絡むのではなく,誰もがビルドアップの意識を高く持ちながら仕掛けへと関与していく。


 そこには,ポジショニング・バランスという要素もしっかり存在しています。「仕掛け」という方向性だけに意識を傾けるのではなくて,仕掛けに「意外性」を生み出す基盤として,攻撃参加を促すためのリスク・マネージメントという部分にも意識が向けられたことで,意識面でのバランスは改善されています。


 …実戦で浮き彫りになった課題を,トレーニングでクリアする。修正した結果を,実戦にフィードバックしていく。そして,さらにチームを熟成させていくための課題を,見出していく。


 冒頭にも書きましたが,いい循環に入ってきたな,と思います。そして,オフィシャル(PC,モバイル含めて)を見る限りでは,フォーカスを絞り込んだ修正をかけるのではなく,あくまでも流れの中で修正課題を「考えさせる」トレーニングであるようです。


 着実に,新たなフットボール・スタイルを手にしつつあるな,と。そして,チーム内競争もシッカリと機能をしています。相手のコンディション,という差し引くべき要素もあるでしょうが,それでもチームが成長曲線上にあるだろうことを感じられるゲームでありました。